伝統芸能

三月大歌舞伎 昼の部

3月昼の部は初めて歌舞伎を観るという人にはおススメしにくい。「荒川の佐吉」は初演が昭和7年の新歌舞伎である。美しい七五調などの名台詞や「つらね」はなく、淡々と当時の日常語で会話が続く。「見得」を切る粋な場面もなく、映画のようにストーリーが進…

三月大歌舞伎 夜の部

3月夜の部は初めて歌舞伎を観るという人にうってつけかもしれない。すべての演目が軽く仕上がっているにもかかわらず、歌舞伎のエッセンスが詰め込まれている。「佐倉義民伝」は幕末、「小さん金五郎」は昭和9年、「唐相撲」にいたっては昭和29年の初演とい…

二月大歌舞伎 六代目中村勘九郎襲名披露 夜の部

2月17日金曜日午後4時の新橋演舞場はなぜか殺気だっていた。地下食堂の予約コーナーに客が押し寄せ、予約台を動かしてしまうため、係員が悲鳴を上げていた。雪が予想されていたのにもかかわらず着物姿の御婦人方も多く、取り立てて歌舞伎に馴染が薄い観客が…

第36回俳優祭

第36回俳優祭を観てきた。「絵本太功記」と「殺陣田村」という真面目な出し物、お楽しみ模擬店、幹部勢ぞろいの3部構成だ。「絵本太功記」と「殺陣田村」の間に1/4のワインを1本、模擬店でさらに1本。ほろ酔い加減で幹部勢ぞろいを楽しんで帰って来た。模擬…

壽初春大歌舞伎 平成中村座・昼の部

2012年1月は新橋演舞場、国立劇場、平成中村座、ル・テアトル銀座、浅草公会堂、大阪松竹座の6劇場で歌舞伎が上演されている。これは戦後最多だそうである。もはや、お財布的にも時間的にも、贔屓の俳優が出演している劇場にしか足を運べそうにもない。お能…

壽初春大歌舞伎・夜の部 2012年

多少損した感のある「昼の部」を見てから1週間後の「夜の部」だ。なんとか元を取らなければならない。まずは三津五郎の「矢の根」である。年末に京都南座で「お江戸みやげ」のお辻を見たし、そもそもここ半年の三津五郎は世話物から舞踊まで大活躍なのだ。そ…

壽初春大歌舞伎・昼の部 2012年

毎年1月は「松の内」までに芝居見物をするのがわが家のきまりだ。ちなみに松の内とは1月15日までだ。地方によっては1月7日までなのだそうだが、それでは短すぎる。本日は新橋演舞場2日目である。最初は魁春と芝雀の舞踊「相生獅子」。二人とも淡々と仕事をし…

平成中村座12月大歌舞伎 夜の部

扇雀の「葛の葉」は前半の早変わりはともかく、後半の奥座敷の場に見入ってしまった。広告業界に3Bという言葉がある。Beauty, Beast, Babyだ。すなわち美女、動物、幼児であり、この3つのモチーフは視聴者の注目を引きやすいのだ。この狂言はその3Bが打ち揃…

平成中村座12月大歌舞伎 昼の部

12月の平成中村座、昼の部は「菅原伝授手習鑑」からの3幕である。じつのところ平成中村座は初めてだ。どうせテント小屋だから、まわりの騒音が聞こえるだろうし、座席もしっかりしてなくて座りにくかろうと敬遠していたのだが、やはりそうだっだ。船のエンジ…

「吉例顔見世興行 東西合同大歌舞伎」夜の部・昼の部

12月8日夜の部・9日昼の部、京都南座顔見世を観てきた。1等席はなんと25,000円。筋書きは2000円もする。ちなみに筋書きとは演劇パンフレットのことで、東京では筋書き、関西では番付と呼ぶ。南座公演で楽しみのひとつは、この筋書きに掲載されている広告だ。…

「海老蔵に『酒飲み五戒』を贈る」 文藝春秋2月号掲載

文藝春秋 2011年 02月号 [雑誌]出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2011/01/08メディア: 雑誌 クリック: 19回この商品を含むブログ (2件) を見る2月号は1月8日発売だった。大相撲1月場所の初日である。選手交代。 - 歌舞伎ファンが楽しみにしている公演のひと…

坂東玉三郎特別公演

劇場には1月13日に行った。じつはこのエントリを書こうかどうか迷ったのである。迷った理由はこの公演が歌舞伎というよりは、リサイタルだと思われるからで、リサイタルには土地勘がなく、書きようが判らないからである。まずは料金がリサイタル並みなのだ。…

『江戸・東京 下町の歳時記』

江戸・東京 下町の歳時記 (集英社新書)作者: 荒井修出版社/メーカー: 集英社発売日: 2010/12/17メディア: 新書 クリック: 7回この商品を含むブログ (8件) を見るちょいとこの書評を書くのが遅くなっちゃったんで、正月も残りわずかになっちまった。正月最後…

国立劇場平成23年初春歌舞伎公演 「四天王御江戸鏑」

新年早々訃報がとどいた。中村富十郎丈が昨夜お亡くなりになった。謹んでお悔やみを申し上げる。誠に残念。鋭い口跡で、踊りに切れがあり、位の高い役で素敵だった。昨年に引き続き、国立劇場初春公演の初日を見に行った。昨年のブログの冒頭ではこう書いた…

日生劇場十二月大歌舞伎

海老蔵の「霞町酔醒江戸桜」(かすみちょう えいぞめの えどざくら)で世間は大騒ぎである。12月8日も朝からNHKを含め全てのキー局が話題として取り上げていた。なにはともあれ、顔も目も異常ないようでひと安心した。万が一にも海老蔵がいなくなると次の数…

吉例顔見世大歌舞伎・夜の部

夜の部前半は幸四郎の「ひらかな盛衰記」だ。退屈だった。真面目に台詞でも聞こうと努力しても、幸四郎も段四郎も分かりにくい。最後の立ち回りで幸四郎はもうふらふらだ。瀕死の役を演じているのか、本人が本当に瀕死なのかがわからない。「権四郎、頭が高…

吉例顔見世大歌舞伎・昼の部

客席の平均年齢がいつもになく高い日であった。となりから「○○ちゃん、若いわねぇ」とご婦人の話し声「私が中学生だったころに生まれたのよねぇ。あら!そう!今年喜寿なの」この二人組が今日の中央値だと思われるのだから、若輩ものは小さくなって見ていた…

松竹大歌舞伎 平成22年中央コース@王子「北とぴあ」

非常に苦痛を伴う観劇だった。歌舞伎のことではない。会場となった「北とぴあ・さくらホール」の椅子がひどかったのである。3時間の公演だったのだが、膝もお尻も背中も悲鳴を上げた。座面までの高さを実測してみたら33センチしかなかった。身長178のボクの…

團菊祭・昼の部

團菊祭昼の部は「摂州合邦辻」からだ。大阪公演に合わせ、摂州という地名がついた人形浄瑠璃を選んだのだろう。主人公玉手御前は女形にとっては大役だという。平成に入ってから玉手御前を演じたのは歌右衛門、菊五郎、藤十郎、7代目梅幸、芝翫だけだ。それを…

團菊祭・夜の部

歌舞伎座建替えまでのロングラン巡業はじまりの月である。これからの3年間、役者はもちろん大変だが、見るほうだって大変だ。大阪で演られると電車代と宿代をいれて、普段の倍以上の物入りである。京都で演られた日には、ついついお茶屋やら線香代やらが加わ…

御名残四月大歌舞伎・第2部

ある意味でお昼の「寺子屋」はこれで良いのかもしれない。不必要に泣けてきたりしないからだ。幸四郎の松王丸は相変わらず大芝居掛かっていてリアリティがない。玉三郎にいたっては小太郎がじつは腹違いの子供だったのかと思うほどそっけない。2人とも上手に…

御名残四月大歌舞伎・第三部

「実録先代萩」は現歌舞伎座での中村芝翫、中村宜生、片岡千之助を観るために設定された演目であろう。芝翫は新歌舞伎座ができた時点で85才を超えているはずだ。宜生は橋之助の3男で芝翫の孫である。千之助は考太郎の長男で仁左衛門の孫である。正直なところ…

御名残四月大歌舞伎・第一部

「御名残木挽闇爭」はキラ星の花形たちのせり上がりで始まった。真ん中に未来の団菊たる海老蔵と菊之助。松緑、染五郎、孝太郎、勘太郎、七之助、獅童らがズラッと並んで、下手に親世代の時蔵。舞台全体が眩しい。途中から三津五郎と芝雀が加わるのだが、花…

御名残三月大歌舞伎 第1部・第2部

第1部・第2部を連続して観たのは、いよいよ歌舞伎座はあと40日という日だった。率直な感想は「中村梅玉ショー」だ。「加茂堤」の桜丸、「筆法伝授」の武部源蔵、「白波5人男」の赤星十三郎と出ずっぱりの印象だ。途中の「五右衛門」と「女暫」には出演して…

御名残三月大歌舞伎・第3部

いよいよあと51日となった歌舞伎座に出かけた。菅原伝授手習鑑の道明寺と石橋(しゃっきょう)の2本立て。3部構成の第3部である。道明寺は玉三郎と秀太郎、孝太郎の女形だけの起、彌十郎と歌六の承、我當と市蔵の転、仁左衛門の結という起承転結に、錦之助が…

「2月文楽公演 第2部」と「住大夫師匠のお話」

2月の第2部は近松門左衛門の「大経師昔暦」だった。ストーリーは近松おなじみのどろどろものである。思わぬ次第で京の大商家の女房と手代が肌を触れ合うことになり、やがて女中も巻き込みながら死ぬことになる悲劇だ。3段構成で真ん中の「岡崎村梅龍内の段」…

近づく歌舞伎座大千秋楽 「御名残三月大歌舞伎」

3月大歌舞伎の切符が届いた。歌舞伎座の大千秋楽が近づいてきたことをひしひしと感じさせるタトウに仕上がっている。表は金銀に彩られた、竹林に雀と春を待つ筍、裏は菜の花に雀と雨上がりの虹だ。いよいよ「御名残三月大歌舞伎」である。配役は激しく豪華。…

第170回文楽公演 「曽根崎心中」

冬の日曜日の国立劇場周辺はじつに寂しいものだ。地下鉄半蔵門駅出口を出てから劇場までの道すがら、開店しているお店は中華料理店だけだ。これから華やかな舞台を観に行くという高揚感がそがれてしまう。国立劇場そのものも皇居に面している劇場玄関は立派…

国立劇場新春歌舞伎公演「旭輝黄金鯱」初日

年末から楽しみにしていた大歌舞伎だ。今年のお正月のメインイベントだ。いやはや面白いのなんの、楽しいのなんの。観客全員、帰り道はニッコニコだ。舞台上の菊五郎劇団だけでなく、今日は大向うをはじめ、多くの贔屓客がいるからこそ、さらに楽しめたよう…

11月花形歌舞伎・昼の部

まだ時差ボケしていて、鼻風邪も治っておらず、グダグダの状態で演舞場に行ってしまった。花形歌舞伎昼の部を観るためである。演目は「盟三五大切」だ。前回観たのは仁左衛門の源五兵衛、菊五郎の三五郎、時蔵の小万だった。今回はそれぞれ染五郎、菊之助、…