11月花形歌舞伎・昼の部

まだ時差ボケしていて、鼻風邪も治っておらず、グダグダの状態で演舞場に行ってしまった。花形歌舞伎昼の部を観るためである。演目は「盟三五大切」だ。前回観たのは仁左衛門の源五兵衛、菊五郎の三五郎、時蔵の小万だった。今回はそれぞれ染五郎、菊之助、亀治郎、愛之助である。

「今回が悪いわけではない。前回が良すぎたのである。」と、自分に言い聞かせながら、最後まで椅子に座っているのがやっとだ。

見せ場の一つである「五人切り」がまったく凄惨ではない。源五兵衛に少しの狂気も宿っていない。それゆえに話が判らなくなる。花道も2回ともフラフラ歩いてくるばかり。風邪でも引いてて熱っぽいのかもしれないという歩きだ。

菊之助は粋なのだが、たっぷりと演じている。小悪いところがない。腹を切っても粋に徹していて、台詞が妙にはっきりしている。町人にして忠臣だが、ケチな美人局になってない。

亀治郎に至ってはもはや言いようもない。小万がどんな人物なのか全く判らない。狂言の流れと関係なく見得を切って醜い。妙な「のけ反りスローモーション」をやりたかったらしい。

愛之助に八右衛門は無理だ。いい男すぎるのだ。場面転換は八右衛門によるところが大きいのだが間が悪い。八右衛門の源五兵衛に対する「愛」が感じられない。

前回と同じなのは梅枝の菊野だ。おそろしくキレイになっているし、下手をすると小万より存在感がある。愛之助の源五兵衛、菊之助の三五郎、梅枝の小万で良かったのではないか。染五郎は家主役がはまっていた。亀治郎は・・・・・・夜のマンドリルで決定だ。

あまりに疲れたので、昼の部は「三五大切」で帰ってきた。雑誌原稿の〆切が2本あって、本当は歌舞伎どころではなかったのだ。ともかく、しばらくは花形には行かないであろう。自宅で辰之助のDVDでも観て疲れを癒そう。