御名残四月大歌舞伎・第2部
ある意味でお昼の「寺子屋」はこれで良いのかもしれない。不必要に泣けてきたりしないからだ。幸四郎の松王丸は相変わらず大芝居掛かっていてリアリティがない。玉三郎にいたっては小太郎がじつは腹違いの子供だったのかと思うほどそっけない。2人とも上手にちんまりと座りこんでいて、大きく見えない。つまり脇役に見えてしまうのだ。主役は仁左衛門と勘三郎で2人とも驚くほど達者だから、こちらが主役だ。とはいっても、さくさくと役をこなしている印象であり、要はみんなこの狂言に飽きているのね、という感じがした。そもそも3部構成とはいえ、熊谷陣屋と寺子屋を同時にかけているのだから、どちらかに軍配が上がるのは当然であろう。熊谷陣屋の圧倒的な勝ちである。「寺子屋」でもっとも良かったのは綾太夫だった。
「三人吉三」もじつは同じような印象だった。もともと「こいつぁ春から…」を聞くためにあるような場だから、淡々としていて良いのかもしれない。とはいえ、歌舞伎座最後の三人吉三は菊之助、海老蔵、勘太郎、梅枝あたりで良かったのではないか。それこそこれから歌舞伎にも春が来ることを暗示していて良いような気がする。「藤娘」では長唄を堪能した。正直にいうとこの類は上手なおじいさんより、ヘタでも芸舞妓のほうが遥かに好きである。
写真は花道についている歌舞伎の紋章だ。解体時にこのたぐいの飾り物や照明器具などの小物を捨てないで売ると、買いたい人は多いのではないか。