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この面接メモは成毛父娘の共作である。対象となるのはメーカーや商社などの営業系総合職希望者だ。理由は父娘とも面接官・被面接者として、それしか経験したことがないからである。あらゆる業種の開発・製造技術者、金融など個人の信用力を試される職業、即戦力を求められる一般職については別の戦略が必要かもしれない。

1.日経新聞を読む必要はない
完全に理解していれば別だが、付け焼刃的な知識をひけらかすのだけはやめたほうがよい。「自分が持っている知識はせいぜい半年以内に読んで知りえたことであり、そんなことはビジネスマンを20年もやっている人の前では子供騙しだ」ということすらイメージできない愚か者だと思われかねない。逆に嘘でも良いから、自宅で親は日経新聞をとっているが、自分はあまり読まなかったと言ったほうが良いかもしれない。少なくとも親は愚か者ではないことだけは証明できる。

2.サークルのリーダになってはいけない
なぜか日本では、ほぼすべての学生が面接の時には、なにかのサークルのリーダーになってしまう。そもそも、サークル体験は就職上の価値は低い。リーダ-であってもなくてもほとんど意味をなさない。にもかかわらず、ほとんどの学生が自分にリーダーシップがあることを伝えたいあまり、いわばウソをつくのだ。

3.誰がエライのかを一発で見抜くこと
意地悪い質問をしない人が一番エライ人であり決定権者だ。その人に向かって話すこと。残りの人は完全に最後まで無視してよい。残りの人も決定権者の視点で見ているので問題はない。

4.徹底的に営業すること
誰でも好きだと言われると嬉しい。したがって会社を褒める必要がある。業績や社史などを持ち出して難しく褒めることはお勧めしない。誰でもやるからだ。社内に入った瞬間に好きだと思ったことをいえばよい。空気がいい匂いだといえばよいのだ。そして「一番偉い人」に敬意を払うこと。その人が万が一にも自慢話でも始めたら、絶対に止めてはならない。

5.目立つこと
顔の印象が薄い人は、たとえば太い黒ぶちの眼鏡を作るなど考えたほうがよい。髪型だけは事前に偵察して、その会社の1-2年生の社員と同じようなものにしておくことをお薦めする。

6.面接中に失敗したと思ったらリセットすること
全員が極度に緊張していることは面接官は重々知っている。そして、良いところを見出そうともしている。だとするならば失敗しても「はい! もう一回やります!」が完全に有効なのだ。絶対に諦めないこと。むしろ諦めない人間だということをアピールできる良いチャンスだ。

7.どの企業を受けるかは信頼できる身近なビジネスマンにきく
自分が何をやりたいかなどを考えても意味はあまりない。自分が何に向いているかすら考えても無駄だ。仕事そのものを知らないからだ。学生だからではない。社会人だって隣の会社について本当はなんにも判らない。信頼できる人に自分はどの職種・業種の「雰囲気」なのかを聞いたほうがまだ正確なのだ。

8.大人にならない
難解な言葉は使わないこと。難しいことを簡単に伝えることができない愚か者だという印象を持たれかねない。それよりも、ともかく面接官を笑わせたら勝ちだ。

こんなノウハウをつかって入社しても意味がないだろうと思われるかもしれない。しかし、前置きで書いたように、これはメーカーや商社などの営業職用だ。もう一度見てみよう。商品の売り文句は付け焼刃ではない、ウソはつかない、決定権者に臆せずアプローチできる、売り込みに失敗してもリセットできる、情報を収集できる、そして交渉は和やかに、これらはこの分野のビジネスマンの必須条件なのだ。

ちなみに娘は一切の就活マニュアル本を読まなかった。そのため、上記と同じことがマニュアル本に書かれているかもしれない。マニュアル本を読むと、競争相手と同じようになってしまうのが怖くて読まなかったとのことだ。それゆえ、もしこのメモが参考になるようであれば、コピーしないでほしい。参考にならなければ、黙って無視してくれればよい。本当に気の毒な就職環境だけれど、がんばってほしい。