オリピックからレスリング除外は強い日本狙いなのか?

http://en.wikipedia.org/wiki/Wrestling_at_the_2008_Summer_Olympics


ネット上ではいまだに強い日本が狙い撃ちにされたという印象を持っている人が多いようだ。曰くJOCは不甲斐ない。しかし、北京オリンピックの結果を見ると男子フリースタイル7階級、男子グレコローマン7階級、女子フリースタイル4階級の計18階級で競技が行われ、日本のメダル獲得数は71個中6個だった。そのうち金メダルは吉田と伊調の2個である。日本女子が常勝だから除外になったという根拠は薄いように思う。

IOCは国際レスリング協会に対し、グレコローマンを外す検討をするように指示し、協会はそれを断っている。IOCはメンツを潰されたのだ。(テコンドーや近代五種はホイホイ指示に従っている)ちなみにグレコローマンはロシアのお家芸

GOEMON


大阪松竹座歌舞伎の「GOEMON」見て参りました。空飛ぶわ、フラメンコるわ、OSKダンサー熟練ぽいわ、客席走り回るわ、メタル山門あるわ、竹本も室内楽もあるわ、大薩摩+フラメンコ合奏だわ、宙舞うわの満漢全席。最後は大阪のおばちゃんたちと一緒にラブリンに手を振ってしまいました。いかんいかん。梅枝・松也を先頭にした次世代花形に愛之助が花を添えたという感じ。これを橋下市長が見ると、さらに文楽への風当たりは強くなるかもしれないねえ。

成毛眞の「これって暴論?」第1回

クーリエ・ジャポンの連載を成毛眞ブログに転載開始します。毎月世界の記事が満載のクーリエ・ジャポン町山智浩のUSニュースの番犬、佐藤優の国際ニュース解説室、など世界に開かれた記事が主力なのに、伝統芸能話なんぞを書く勇気!ははは。
http://courrier.jp/

「30年後も帰って来られる場所」

仕事に疲れたとき、ひとは家に帰って身体を休める。しかし、仕事にも家にも疲れてしまったとき、ひとはどこに帰るのだろう。野球ファンであればスタジアム、ミッキー好きであればディズニーランドだろうか。どちらも仕事も家庭もなかった頃の自分に戻れる場所だ。希望と夢に満ちていた少年少女時代に束の間まどろむことができるのは子供のころの幸せな体験があるからだ。

それではひとが中高年になっても、スタジアムとディズニーランドだけが心の故郷で良いのだろうか。勇気にみちて輝いていた30代の自分が遊んでいた場所に帰ってみたいと思うこともあるはずなのだ。しかし、大都市の繁華街はまたたく間に姿を変えるし、飲食店は有為転変を繰り返す。上司や会社のグチでうさを晴らしていたバーやカフェなどは明日にでも消えてしまうかもしれない。

大切な自分史をそんな危ういインフラに頼るのは考えものだ。還暦や古稀を迎えても30代の自分に戻ることができる場所をいまから作っておくべきだ。悠々自適とうそぶきながら、そのじつ無為に毎日を過ごしているようにみえる団塊世代の先輩諸氏をみているとつくづくそう思うのだ。

いまから数十年後でも不変の場所とは、過去も数十年以上不変であった場所にほかならない。できれば百年以上も変わらなかった場所であればさらに安心だ。 観光地として京都の寺社仏閣やヨーロッパの古い町並みが老若男女に人気なのも納得できる。

しかし、観光地では仕事や家庭に疲れたときに帰る場所とは言いがたい。そこは本来訪れる場所だからだ。帰る場所としてのプライベートな空間と時間、歩きまわる観光ではなく受動的に楽しめるイベントなどもいまから確保しておきたいのだ。そのプライベートな空間と時間を確保するための第一候補はお座敷遊びである。

東京であれば新橋や浅草、京都であれば祇園町や宮川町、金沢であればひがし茶屋街など、日本にはまだまだ花街が残っている。花街の歴史は折り紙つきだ。祇園町の一力亭などは忠臣蔵大石内蔵助が討ち入り前に豪遊したという記録が残っているほどで、すでに三百年以上営業していることになる。数十年後に訪れても「お帰りやす」と迎えてくれるに違いない。

いっぽうで、受動的に楽しめるイベントの筆頭は歌舞伎やオペラである。なかには数百年前の演目もあり、これまた数十年後に見ても大筋は変わっていないはずだから、いつでも若いころ通った劇場に帰ってきたという安堵感を得ることができるはず。

この両者に共通するのは敷居の高さ、小難しさ、料金の高さなどであろうか。これからこのコラムではしばらくのあいだ、日本の伝統大衆文化の楽しみかたや簡単な潜り込みかたなどを紹介してみようと思う。その中から世界に誇れるアニメや「かわいい」という現代日本大衆文化へとつながってきた道のりも見えてくるはずだ。その道のりは今後数十年のビジネスにも直結していることは間違いないのだ。


今月のおススメ本『京都の流儀』
徳力龍之介著 木楽舎 1300円
敷居は高いが、一度足を踏み入れると安らぎに満ちている「花街」という文化空間を、粋人が案内する。数百年の伝統の一端が垣間見られる入門書。

『モサド・ファイル』

モサド・ファイル

モサド・ファイル

モサドとはイスラエルの対外諜報活動と特務工作と担当する組織だ。佐藤優氏は「客観的に見て、世界で最も強力な対外インテリジェンス機関はCIAだ。しかし、個々のインテリジェンス・オフィサーの能力においては、イギリスのMI6、イスラエルモサドのほうがはるかに高い」と評価している。つまり、モサドは現代スパイの総本山のようなものなのだ。

スパイ組織なのだから当然その実体や活動は秘密なのだが、秘密があればそれを知りたいのが人間というものである。これまでにも『憂国のスパイ―イスラエル諜報機関モサド』や『モサド−暗躍と抗争の六十年史』など多数のモサド史を描いた本が出版されている。本書は2010年にイスラエル国内で出版されて以来、70週間もベストセラー入りしているだけでなく、20ヶ国語に翻訳され世界中で読まれている最新のモサド・スパイ列伝だ。この分野の白眉であろう。

著者の1人はイスラエルの元国会議員にしてスパイ小説作家のバー=ゾウハーだ。小説『エニグマ奇襲指令』の著者といえば判りやすいかもしれない。もう1人はおなじくイスラエル人のジャーナリストにしてテレビ局社長のニシム・ミシャル。したがって、本書はあくまでもイスラエルの立場で描かれているのだが、それを差し引いても中東世界の裏面史を知ることができるじつに興味深い読み物に仕上がっている。本書は読み切りの21章で構成されている。21章それぞれに事件や作戦が語られ、モサドのスパイやヒーローが登場する。それでは、その中から少しつまみ食いをしてみよう。

第1章と第2章のヒーローは2002年に57歳でモサド長官に就任したメイル・ダガンだ。ダガンはモサドの生え抜きスパイではない。26歳のときには国防軍大尉で秘密奇襲部隊隊長だった。警戒中の若きダガンはすれ違ったタクシーに手配中のテロリストが乗っていることを発見した。テロリストも発見されたことに気づき手榴弾のピンを抜いて応酬しようとしたが、その前にダガンが飛びつき手榴弾を投げ捨てただけでなく、素手でそのテロリストを殺したという。ダガンはまた海からボートで上陸したレバノン人を装い、PFLP幹部に忍び寄って全員を銃殺したこともある。諜報というよりも工作のプロだったと言える。

それから30年あまり経った90年代後半、モサドは作戦実行能力が低下していた。そこでシャロン首相は30年前の部下であり、すでに退役していたダガンにモサド長官という白羽の矢をあてたのだ。ダガンは強引な手法を非難されながらもモサドを立て直した。そしてダマスカスでのヒズボラ最高幹部イマード・ムグニエの暗殺、シリアの原子炉破壊、レバノンとシリアのテログループ指導者の暗殺など、次々と壮大な工作を成功させたのだった。

この第1章だけでも映画の一本も作れそうである。しかし、そのダガンがモサド長官として諜報世界で真のスーパーマンとなったのはイランの秘密核兵器計画の抹消作戦であった。第2章はその詳細である。90年代のイランは国中にある軍事基地や砂漠の地下に遠心分離器などの核爆弾製造施設を大量に分散建設していた。核爆弾の標的はもちろんイスラエルである。

2005年2月イランのディアレムの核施設が国籍不明機のミサイル攻撃を受けて爆発した。同年、テヘラン郊外の核爆弾起動のための「爆発レンズ」工場も攻撃を受けた。2006年にはイランの秘密施設で最新の遠心分離器の試験運転では式典に出席した人々の目の前で大爆発が起こった。じつはそれら以外にも妨害行為や爆発事件がイラン国内の核施設で頻発していたのである。

攻撃を受けたのは建物や施設だけではない。2010年にはイランの核計画科学部門責任者であるシャフルアリ博士が爆殺された。1台のオートバイが博士の運転する自動車を抜き去りながら爆弾を仕掛けたのだ。シャフルアリ博士だけでなく、核弾頭の起動スイッチの専門家である物理学教授、量子物理学者でイラン核兵器計画の顧問、電磁気学の専門家など多数の専門家がイラン国内で暗殺された。これらの作戦によって、ダガンは少なくともイランの核ミサイル計画を数年は遅らせることができたという。

あまりにも面白いからといって、ここで21章それぞれを要約していくことはできないから、目立った見出しだけでもピックアップしてみよう。第4章「ソ連のスパイと海に浮かんだ死体」。第6章「アイヒマンを連れてこい!生死は問わない」。第10章「ミグ21が欲しい!」。第14章「きょう、戦争になる!」。第15章「アトム・スパイのハニートラップ」。第19章「午後の愛と死」などなどなど、もはやスパイ小説そのままのタイトルであり、しかもその内容もまさにスパイ小説そのままなのだ。

そのなかでも第19章のタイトルはなんと「北朝鮮より愛をこめて」だ。2007年7月、モサドのスパイはロンドンのホテルに滞在していたシリア高官の部屋に忍び込んだ。ノートPCにトロイの木馬を忍び込ませた彼らが知った情報とはシリアの極秘原子炉計画だった。シリアの施設は北朝鮮の専門家によって計画・指揮され、イランから出資を受けていたのである。その事態にダガン率いるモサドがどう対応したかは本書を読んでのお楽しみである。

しかし、面白がっているだけで済ましてはいけない。本書は現在進行中の危うい中東情勢を裏面から映しだしているからだ。「イランと戦争か?」という終章はユダヤの古いことわざで結ばれている。“誰かが殺しにくるなら―立ち上がって、その男を先に殺せ”というものだ。すでにイランは過去の失敗に懲りて、爆撃の影響を受けにくい地下数百メートルに多数の核施設を建設中だという。いっぽうでイスラエルはイランが自国を核攻撃するであろうと信じている。いつイスラエルがイランを先制攻撃しても不思議ではないのだ。

シェールガス革命によって、アメリカ人の中東への関心が薄れると、イスラエルが単独で行動せざるを得なくなり、中東に新たな危機が生まれる可能性がある。その結果イスラエルは第3次中東戦争のときのように戦争を決断するかもしれないのだ。そのような事態になればアメリカの軍事的関心はアジアから中東へと戻ってしまうだろう。結果的に日本は核ミサイルをもつ中国と北朝鮮の前で立ちすくむことになりかねないのだ。つまり、中東はけっして対岸の火事ではないのである。

『ダイヤモンドは超音速で地底を移動する』

本書のタイトルどおり、ダイヤモンドは地底を超高速で移動し、地上に噴出してきたのだという。ダイヤモンドを含んだマグマが、地下400kmのマントル層で生成され、6時間あまりで地上に到着するというのだ。最深部では時速60kmほどでマグマは上昇を開始するのだが、地下50kmあたりからスピードを上げはじめ、地下2kmでは時速1000km、つまり音速の8割に達する。さらに地上に近づくとマグマとガスは時速2000kmにも達することがあるという。ダイヤモンドはなんとマッハ1.8のスピードで地上に現れるのである。想像するだけでじつに愉快である。ドッカーン!バラバラバラバラ!とダイヤモンドが降ってくるのだ。

この破局的な噴火は過去に何回も起こっているのだが、直近でも数億年前。次は2億年以降になると予想されているから、われわれはこのタイプの天災に備えている必要はなさそうだ。プレートテクトニクス理論によれば、大陸は移動し、離合集散を繰り返す。パンゲアと呼ばれる超大陸が分割して、現在の5大陸の配置になり、また2億年後には一つの超大陸になる。すでにその大陸の名前は決まっていて「アメイジア」と呼ばれている。ダイヤモンドを含むマグマ噴火はこの超大陸が形成されないと起こらない。ダイヤモンドは数億年に1回しか地表に現れないのだから、希少性が高いのは当然なのかもしれない。

本書はダイヤをモチーフとし、地球科学や超高圧研究の現在について、まったくの初心者にも判りやすく、ある程度知識のある人にも読み応えのある入門書に仕上がっている。ほかにも、オーストラリアの研究チームが発見したある中性子星には連星(兄弟星)があり、その巨大な連星はダイヤモンドでできている可能性が高いこと。(連星なのだから、地球などの惑星レベルの大きさではなく、恒星レベルの大きさのダイヤモンドということになる)また、地球のマントル上部はかんらん岩でできており、その組成はかんらん石(宝石名ペリドット)、翡翠ざくろ石(宝石名ガーネット)という宝石のかたまりのような状態になっていること。天然ダイヤモンドよりも硬い人工的に作られたヒメダイヤはミカン色であることなど、興味深いサイエンストリビアが綴られる。

ちなみにこのナノ多結晶ダイヤモンド=ヒメダイヤの発見者にして命名者こそが本書の著者だ。ヒメダイヤのヒメとは著者が教鞭をとっている愛媛大学のエヒメから名付けられたものだ。著者の将来の夢は「ヒメダイアを使って、実験室内に地球内部のマントル全域を精密に再現すること」や「ヒメダイヤを超える硬さの新物質を生み出すこと」など、研究対象は小さな宝石であっても、科学的には壮大な事業だ。ロマンだ!

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『なぜ、勉強しても出世出来ないか』

著者はネットバブル期からスキルアップ系の記事を書き続けてきた文筆家だ。いわば勝間和代本田直之に代表される「スキルアップ教」の尖兵だった。ビジネス雑誌などを通じて「今こそスキルアップを!」と煽りながら、私は正しいことを言っていると信じて疑わなかったという。その著者が10年たって「スキルアップ教に熱狂した若者たちは、果たして幸せになれたのだろうか?」と疑念を抱いたところから、本書の執筆が始まった。

著者は自分も含めて当時のスキルアップに関係した団体や人物に反省をもとめているように見える。その理由は実名がバンバン登場するからだ。「外資コンサルティング会社アクセンチュアに行き、その後独立したが取り込み詐欺にあって会社を潰してしまった人。野中ともよ氏肝いりの次世代経営者募集に応募したMBAホルダーたち・・」などは朝飯前、「はじめに」からこの調子が全開だ。第1章だけでも大前研一堀紘一中谷彰宏、「とらばーゆ」、「ケイコとマナブ」、『絶対内定』、『金持ち父さん、貧乏父さん』、勝間和代、「TOEIC教」など、一世を風靡したスキルアップ教のキラ星たちが登場する。

目次をもう少し眺めてみよう。「スキルアップのウソ」と副題がついている第2章では「スキルは必ずコモディティ化する」「そもそも、スキルアップ教が幻想だった」「スキルアップ族の評判が悪い」などはまだ柔らかいほうで「エリート(選抜組)は、30歳までに確定している」「30歳以上のキャリアチェンジ(職種変え転職)は困難」など、ストレートな表現で売りだしている『この無駄な努力はやめなさい』などの拙著がノックダウンされそうな率直さである。

第3章「スキルアップに振り回される人々」では税理士、会計士、弁護士、医師などの最高級スキルのほか「TOEICを勉強すればするほど、英会話ができない」など、またまた拙著の『日本人の9割に英語はいらない』など童話に見えてしまう。第4章は「最もわりに合わない勉強はコレだ!」という章で、これまた拙著の『勉強上手』など地平線の向こうまでぶっ飛ばされてしまいそうだ。恐ろしいライバルが現れたものである。

ところで、最終章の「脱スキルで幸せな職業人生を作る28の仕事術」という小見出しには少し笑ってしまった。スキルアップ教は「◯◯術」という言葉が大好きだったのだ。とはいえ「職場のデキる人を真似る」「仕事を選ばない」「えらぶって格好をつけない」「特定の人とだけつるまない」「人を批判しないで、褒める」「抽象より具象」などは、完全に同意するものだ。ざっと眺め読みしたかぎりではロジックに破綻はないし無理筋もない。若手ビジネスマンが気軽に読めて気楽になれる良書だと思う。

じつは10年ほど前インスパイアを起業したころのこと、当時の30代にはロクなのがいないとぼやいていたことを思い出す。まさに彼らはスキルアップ教の信者だったのだ。その彼らが最近になってスキルアップの呪縛から逃れ、目の前の仕事に向き合い始めたことを実感している。彼らはこれから大きな戦力として日本をリードしはじめることを期待したい。それにしても全編を通じての素直さには呆れるばかりなのだが、180度転進できる柔軟性や決断力は、スキルアップ教の尖兵だった著者が、その頃スキルアップしたおかげなのかもしれない。

えっ? 評者のスキルは何かって?
そりゃあもちろん、他人の本のレビューを借りて拙書を売り込む「営業術」!
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『ドッグファイトの科学』

 

犬のケンカの科学のことではない。ドッグファイトとは戦闘機同士による格闘戦だ。第1次世界大戦のごく初期には自分の下を飛ぶ敵機にレンガを落としていたこともある。そのあとは瞬く間のあいだにピストルから機関銃、機関銃から機関砲、さらに空対空ミサイルの装備と変化していった。現在では72km先の敵機をミサイル自身がレーダー電波を放射して自律的に攻撃するタイプのミサイルが標準的になってきている。

それでは敵機が見えない位置から攻撃できるのだから、プロペラ機時代のドッグファイトなど起こらないと思われがちなのだが、そうではない。じつはベトナム戦争で機関砲しかもたなかったソ連製MIG-21に、ミサイルしかもたなかった米軍のF-105やF-111が苦戦を強いられたことから、やはりドッグファイトに関する装備と技術は必要だと考えられているのだ。もちろん、航空自衛隊の主力戦闘機であるF-15にも機関砲が装備されている。

本書の著者は1966年生まれ。航空自衛隊でF-15Jのパイロットとして勤務していたプロである。本書がプロが本気をだして入門書を書くとこうなるという見本だ。第1章は揚力と迎え角や飛行速度と旋回率などの基本だ。インメルマンターンやスライス・バック、アンロード加速などの戦闘機の基本を説明する。第2章は戦闘機動の基本についてだ。ハイスピード・ヨーヨー、バレルロール・アタック、ローリング・シザーズなど判りやすい図版をつかって説明してくれる。このあたりで興味を失った人には本書をオススメしないが、3次元の機動などの興味を持つ人は夢中になるかもしれない。

「素朴な質問」という最終章が面白い。たとえば敵機の数が自分たちよりも多かったときは離脱せよと説く。つまり必死に逃げるべきだというのだ。これはランチェスターの法則と呼ばれ、マーケティングを学ぶものであれは基本中の基本である。また、古い機体で新しい機体に勝てることがあるという。航空自衛隊で異機種間戦闘訓練を行ったところ1950年代から使われているF104が現用機のF15に勝利することもあったというのだ。ベテランパイロットは戦闘機の性能差をも超越することがあるらしい。ご同輩。胸を張って暴れまわっても良いようですぞ。

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