デノミとアングラマネー

お札印刷器

お札印刷器

デノミとは現在の100円を新1円に、1円を新1銭に読み替えることだ。すなわち新1円がほぼ1ドルということになる。1999年に三菱総研が『「円のデノミネーション」の経済効果』という論文を出している。この論文によれば、産業連関表から試算すると印刷業などでの一次効果は2.2兆円、生産誘発額は4.2兆円と推定されるとのことだ。

ところで、内閣府によれば2兆円の定額給付金の経済効果は0.5兆円であるという。もしデノミを行い、発生したコストを三菱総研が推定した一次効果と同額の2.2兆円とし、この分を全額減税したとすると、その経済効果は4.2兆円となる。つまり、政府が民間のデノミコストの一切を負担したとしても、デノミは定額給付金の8倍の経済効果があるのだ。

デノミを行うためには事前に日程を提示して、全国の全ての組織がその準備に入る必要がある。新円発行が2年後だったとしても、政府は正式に発表するだけで、明日から効果が発生するのだ。デノミの経済効果は準備期間の2年間であるが、その期間にはなんらかの臨時雇用が生まれる。この期間を利用して正規雇用への道筋もつけられよう。

過去にデノミについては喧々諤々の議論がなされてきた。否定派はデノミによる経済効果は一時的であり、国民にコスト負担を強いるというもの。賛成派はしかしながら一定の経済効果はあり、ドルやユーロと同レベルの単位になることで国際通貨らしくなるというものが多い。

デノミの効果についてこのブログ的に考えてみる。

第一はアングラマネーのあぶり出しだ。『日本アングラマネーの全貌』によれば、個人隠し資産は118兆円にもなるという。この隠し資産はデフレ下で増加しているであろうし、かなりの割合が現金で退蔵されているであろう。現金で隠し資産をもつ個人はデノミに際して旧円を使わなければならなくなる。すでに世界中の銀行はマネーロンダリング対策をとっているから、多額の現金を銀行に持ち込むと、即時に把握することができるからだ。

それではつまらないからと、現金で決済できる消費にかなりのお金が回ることになる。退蔵された資産の10%が出回ったとしても12兆円の経済効果なのだ。新円発行から3年後には10万円以上の旧円と新円の交換を停止すると発表すれば、デノミ発表から5年間にわたり大規模な消費が発生しよう。

第二は硬貨の電子化促進と改鋳である。証明しろと言われると困るのだが、デノミで人々の硬貨に対する感覚が変わるため、SuicaEdyなどの電子通貨の流通量が増えると確信している。電子化を進めるために、わざと硬貨を安っぽくするのも一案だ。

日銀によるとこの11月末の100円硬貨流通数は104億枚である。さらに100円硬貨の直径を現在の22.6mmから0.6mm小さくするだけで、5%分のニッケルと銅を回収することができる。100円には1.2グラムのニッケルが入っている。日銀によるとこの11月の100円硬貨流通量は1兆423億円なので、回収できるニッケルは1万2400トンだ。この両方の効果で政府は金属を回収しつつ、発行コストを将来的に下げることができるであろう。

第三は三菱総研のレポート時から9年が経過し、IT化が進んだため、デノミの一次効果は印刷業だけでなく、自動販売機などを含めた広義のIT産業においても発生することだ。IT産業における雇用者の平均年齢は低いため、二次経済効果も期待できる。

アングラマネーあぶり出しに関しては包囲網が完成しつつある。すでに金融債は本券不発行になっているし、株券も電子化される。あとは貴金属と高額時計などの取引き監視だ。ところで、ある高級ブランドに勤務していた友人から聞いたのだが、毎日高額時計を何百万円分も買いに来る制服姿の女性がいるのだという。どの業界の制服かはあえて書かないが、ロンダリングとみて間違いないだろう。