国立劇場12月歌舞伎公演


菊五郎劇団による遠山桜天保日記の通し狂言だ。ごぞんじ遠山の金さんである。大詰はもちろん北町奉行所のお白洲での遠山裁きだ。そしてもちろん「おうおうおう、この桜吹雪が目にへえらねえか」と片肌を脱ぐ菊五郎。下手人の松緑は「市中引き回しの上、打ち首獄門」となった。磔獄門ではなかった。

この狂言明治26年に初演されたのだという。それを菊五郎がテレビでお馴染みのお白州の場面などの演出を施し、半世紀ぶりに芝居として作り上げたものだ。慣れない芝居だから役者たちも大変なようで、7日目だというのにどこかしっくりこない。

松緑がなんとも悪者に見えないが、それで良いのかもしれない。時蔵親子の出番が少なく残念だった。なんと梅枝の出番は15分だけだった。菊之助は相変わらずキレイだ。若手以外は脇役を含めて全員2役で出演しているという印象だ。いかにも劇団という感じがしてよいが、だとすると舞踊も見たかった。まあ、師走の国立劇場なんだからこれでいいか。

ともあれ、今日はどうにも妙な観客が第一列目に座っていて参った。迷惑千万なタイミングでやる気のない声をかけ、一人で始終拍手している。さぞ、役者もやりにくかったと思う。