ビル・ゲイツの懐とNPOの近未来

ホリエモンブログでビルゲイツの資産について語られている。面白いので、ビルゲイツの懐を探りつつ、NPOの経済について考えてみようと思う。
http://ameblo.jp/takapon-jp/

過去における個人資産の最大期はITバブルがはじける直前であろう。wikiによると1999年の個人資産は1010億ドルである。(10兆円ちかい)マイクロソフトの株価は2000年にほぼ半分になたため、2000年末には500億ドルに減っていたはずだ。(それでも5兆円だ)
http://en.wikipedia.org/wiki/Bill_Gates

ところで、ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団(BMGF)の2008年末の資産は245億ドルである。ちなみに2007年末には343億ドルであった。1年で株価の下落などで78億ドルの資産を減らしているし、寄付収入も10億ドル減っている。バークシャー・ハザウェイウォーレン・バフェットが300億ドルの寄付を行うを宣言しているが、この寄付は段階的に行われるため、いまなおBMGFの資産の大半はビルゲイツからのものであろう。
http://www.gatesfoundation.org/annualreport/2008/Pages/combined-statements-financial-activities.aspx

ちなみにBMGFは2007年ぐらいから、運用している資産内容が財団の目的に合致していないと批判されている。たとえば、開発途上国には製品を販売していない製薬会社などの株式所有についてである。現在BMGFは資産内容を組み替えている模様である。また、ビルゲイツらの死後50年以内に全てに資産を寄付し終えると宣言している。

2008年におけるBMGFの支出は36億ドルだ。主要は3分野で、「グローバル・ディベロップメント」に4億6000万ドル、「グローバル・ヘルス」に18億ドル、「米国内」に5億ドルだ。「グローバル・ヘルス」というプログラムでは、主にワクチンを開発途上国に提供しているらしい。
http://www.gatesfoundation.org/annualreport/2008/Pages/2008-grants-paid-summary.aspx


ちなみにゲイツは総資産の95%を寄付すると過去に宣言している。彼の性格上、間違いなく実行されるであろう。その場合、2000年末の資産は5兆円だから、手元には2500億円残る計算になる。
http://www.facebook.com/group.php?gid=91295327780


そもそも、アメリカにおいては公共的なNPOに対する寄付には、調整後総所得の50%を限度とした税控除があるため、連邦政府が税収を軍事などに支出することを嫌う人は、好みのNPOに寄付をする形で間接的に社会に対して納税しているともいえる。アメリカは連邦国家だから、ほとんどの個人にとって連邦政府はいわば他人なのだ。対象となるのはIRSが認定した約100万の団体である。

当然、日本にも所得の40%までは寄付控除がある。その対象は特定公益増進法人が約2万団体、国税庁の認定NPO法人は107団体である。NPOWEBによればアメリカの一世帯あたりの寄付金は17万円、日本は3200円であり、日本はアメリカの1.9%しかないということになる。おわかりのとおり、認定している団体数も日本はアメリカの2%であり、数字はぴったりと一致する。
http://www.npoweb.jp/modules/event/index.php?content_id=67

個人的には、日本が連邦国家アメリカと同程度のNPO依存率になるべきかどうかは疑問だ。同時に現在の日本のように、分配のすべてを政府に頼るのも疑問だ。その意味で「ふるさと納税」は非常に良い制度なのだが「納税」という言葉を使うセンスが悪すぎる。(所得税収に対する影響を最小限にするべく、意図的に使ったのかもしれない)むしろ、基礎自治体を特定公益増進団体とみなして「ふるさと所得税控除制度」とするべきだった。それにしてもわざわざ複雑化にしているとしか思われないほど、おバカな仕組みだ。
http://www.soumu.go.jp/menu_kyotsuu/important/pdf/080430_2_kojin_bt3.pdf



ところで、日本の財務省の資料によると1983年まで日本の最高所得税率は75%、一方アメリカのそれは70%だった。現在の地方税を含む日本の最高所得税率は50%、アメリカは45.1%だ。オバマは少なくとも最高所得税率だけは引き上げるであろう。日本もそれに連動すると思われる。税率をあげた場合、納税するよりも寄附するほうが得になってはまずいので、当然のことながらNPOに対する寄附に対する税控除も変わる。結果的にNPOに対する資金の流れは細ることになる。民主党政権下ではNPOの活動は冷え込むという皮肉なことになりかねない。
http://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/siryou/234.htm

ともあれ、個人的には最高所得税率の引き上げも、資産性所得税率(土地・株式売却による所得など)の引き上げも賛成だ。利子も配当も総合課税でよいと思う。じつはボクはストックオプションを給与所得として、しかも青色申告していたのだ。現在の上場株式売却益課税率は所得税と住民税を合わせて10%だ。悔しいったらありゃしない。少しは株式や預金はあるが、利率や配当率が低すぎて税率などどうでもよい。

つまるところ、もうあまり所得を期待できないので、消費税を上げられるほうがつらいということだ。こうやって、どの先進国も老人のライフスタイルに合わせた国造りが進むのだと、つくづく思う。じつのところ、よく語られる貧富間よりも、あまり表面化していない老若間の利益誘導争いのほうが深刻なのだと思うのだ。