二月大歌舞伎・夜の部


歌舞伎座には少し早めについたので周りを歩いてみた。劇場裏の歩道のフェンスには黒っぽいTシャツと足袋が干してあった。大道具の人たちのいわば制服だ。歌舞伎座が立て替えられてビルになると、こんな情緒はもう見られなくなるであろう。ちなみに新歌舞伎座のデザインに対し、石原慎太郎が銭湯のようにしてほしくないと注文を付けたとのことだ。唐破風のことをいっているのであろう。いまごろ洋物好きとは野暮な人だ。

「蘭平物狂」は前半は三津五郎の踊り、後半は三津五郎若手俳優たちの大立ち回りの舞台だ。朝4時まで京都の祇園町で飲んでいたので、前半は起きているのがやっとだった。後半はまさに大立ち回りだ。花道に大はしごを持ち出して、出初式よろしくひっくりかえる。東屋の上からとんぼを切る。三津五郎も空中で熱演する。この公演はあと22日ある。怪我人が出ないことを祈るばかりだ。

吉右衛門の弁慶、菊五郎の富樫、梅玉義経、三人組は染五郎松緑菊之助の舞台だ。まずいはずがない。吉右衛門は汗だらけの熱演だ。大満足の舞台だったのだが、今日はさらに大向こうが素晴らしかった。唄ですかさず「里長」がかかる。「七代目」「二代目」は言うにおよばず、「大播磨」「紀尾井町」と気持ちがいい。弁慶の引っ込みで「たっぷり」の掛け声が2−3発。弁慶が引っ込んだところで、3階に向かって「いよ!大向こう」と掛けたくなる舞台だった。

今月はこの2本を見終わったら帰るべきかもしれない。今日は大川端の設定どおりの節分だったので期待が大きすぎたからかもしれないが、お客はちゃんと見ていて掛け声も拍手もぽらぱらで終わった。いやな役なら引き受けないほうが良いと思うがいかがなものだろうか。