『高島野十郎画集』

高島野十郎画集―作品と遺稿

高島野十郎画集―作品と遺稿

生前は清貧を貫き、1975年に千葉県野田市の老人ホームで亡くなった画家の画集である。名前に心当たりはなくても、3センチ位の火のついた蝋燭の絵をご覧になった方も多いだろう。以下はwikiからのコピペである。

「第八高等学校を経て、親の説得で東京帝国大学でその年に発足したばかりの農学部水産学科に進学、同科を首席で卒業するも恩賜の銀時計を辞退し絵画の道を選び、以降師につくこともなく、特定の美術団体へ属することもせずに、ただひたすら自らの画業に没頭した。」

ボクが最も好きな画家の1人である。もちろん本物の絵は一枚も持っていないので、美術館やこの画集で楽しんでいるだけだ。写真用語で恐縮だが色彩のラチチュードが広く、構図もセンター寄りで、理想の写真とでもいうべき絵だと思う。しかし、写真では絶対に無理な表現だ。写真では対象の実体に合わせて焦点を絞ることができないからだ。

野十郎の絵は感動よりも先に単に「キレイ」だという印象が強い。これは歌舞伎で名優の藤十郎よりも若手の菊之助のほうに引かれるボクにとって普遍の価値だ。青木繁の力強さや藤田嗣治エスプリなどと全く異なる清清しい美とでもいえようか。

人生で始めて買った画集は高校生のときに買ったボナンザブックス版の『ビアズレー画集』だった。それ以来20年くらいは画集など高くて買えなかった。ビアズレーの画集にはオスカーワイルドの『サロメ』から行き着いたのだが、そんなことは関係なく単に「キレイ」だったから買った記憶がある。

ともあれ、この画集は247ページで4800円ほとんどのページがカラーというお得本である。しつこくて恐縮だが、岩波の『ハダカデバネズミ』の1500円に比べると圧倒的にお得である。