『ストラディヴァリウス』
ストラディヴァリウス―5挺のヴァイオリンと1挺のチェロと天才の物語
- 作者: トビーフェイバー,Toby Faber,中島伸子
- 出版社/メーカー: 白揚社
- 発売日: 2008/10/01
- メディア: 単行本
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この本の著者は1965年生まれのイギリス人だ。本書が最初の著作だという。しかし前半のストラティヴァリ本人の伝記はこの本に尽きるといっても良いほどの出来だ。イギリス人特有の歴史と工芸品への顕微鏡的なこだわりがある。物事を総覧的に記述するという本能があるといっても良い。羨ましい限りだ。日本の文物についてもこのような本を読んでみたい。
後半はおもに5挺のヴァイオリンと1挺のヴィオラのまさしく「人生」を描いている。競争者の出現、主人としての持ち主、友としての演奏家、それぞれの楽器の毀誉褒貶は信じられないほど人間のそれに似ている。とはいえ著者は楽器を人生のメタファーとはしていない。そんな姑息なことをしないのが本物のノンフィクションなのだ。
本書は内容の濃密さゆえ、簡単には読み終えることができない。お正月用に良いかもしれない。今年もあと1ヶ月ほどとなった。確率的には今年最後のお勧めノンフィクション単行本であろうか。まだ数冊の候補があるのでそれを読んでからの結論としよう。