東電国有化の議論

ホリエモンの満漢全席で東電の国有化について話をした。ニコ動がそれを短くまとめてツイートしてくれたのだが、趣旨はあっているものの、少し舌足らずなまとめになっていたため、誤解も生まれたようだ。当日語ったことと、その説明をまとめてみよう。

当日は「東電は国有化するべきであり、その上でキレイになった東電を民営化するべきだ」という趣旨の発言をした。

東電は間違いなく財政的に破綻する。予想される廃炉費用や被災者に対する補償の総額はすでに純資産を上回っているであろう。すでに債務超過状態といってもよい。これに新規に発電所を建設する必要がある。資産の証券化など財務的な手当をしたとしても、極めて厳しい状態であることは間違いない。しかしながら、停電を解消し事業は継続させなければならない。

東電は私企業であったから、自由に広告もだし、自由に大学にたいする寄付などもできた。メディアも大学も一定の配慮をしなければならない状態だった。いっぽう、電力料金設定や設備投資などは法令や経産省の指揮下にあり、結果的に官僚以上に官僚っぽい管理職が支配する会社になっていた。国有期間中は広告は制限されるであろうから、メディアによるチェックもききやすいはずだし、管理職も経産省まかせでは済まされなくなる。

財務状態と固有の体質を改善するためにも、一旦は国有化するべきであると主張したのだ。金融機関再生のためにグッドバンクとバッドバンクを分ける手法があるのだが、これを東電に適応することになるであろう。福島原発廃炉費用と被災者にたいする補償は長期大規模になるため、バッドバンクに相当する。国の信用力で補償するしかない。いっぽう、火力・水力発電や送電はグッドバンクだ。このグッドバンクの財務や体質を改善して再上場させ、その上場益でバッドバンクの費用の埋め合わせの一部に使うというほどの意味だ。

原発はこれから30年以上、我が国では新規着工はありえないであろう。技術的に1000年に1度の安全が保証されても、経済合理性が十分に説明されても、CO2排出権を買わざるを得なくなり企業の生産コストが上がっても、原発推進派の首長や議員はけっして選出されることはないであろう。

いっぽうで行政組織も変わらざるを得ないだろう。福島原発は長期的な環境汚染に他ならない。原子力保安院経産省から環境省へ移すべきだという議論が出てくるはずだ。しかし、環境省がCO2問題と原発の間に立って困惑するよりも、最近の文科省の活躍をみるにつけ、旧科技庁への移管のほうが現実的かもしれない。

これらの動きに加えて、発電事業と送電事業の分離という議論が出てくるであろう。これには10電力すべてが反対するはずであり、電力会社と電力労組出身の与野党国会議員が阻止に動くだろう。東電が一旦国有化されると、かれらへの資金の流れがストップするはずだ。日本人は、なにごともなく東電が民間のまま再生し、与野党が利益を同じくする政官財の密着構造が続くことを望むのであろうか。