自動販売機

昨夜「自動販売機税を検討するべきかもしれない。サービス業での雇用は増えるし、電力消費も減る。人とのコミュニケ―ションも増えるはず」という趣旨の連続ツイートをした。その結果、賛否両論が寄せられたのだが、あえて反対の意見だけを羅列してみよう。

「自販機製造関連業者及び大手でない飲料メーカーにとっては「死活問題」ですが」
「便利だったものを不便にするサービスは長期的には成功しない」
「コンビニの店数も売上額も2倍になるわけねーだろ。自販機業界の雇用も吸収せねばならんし」
「自販機、ちっとも好きじゃないですが、地下鉄(特に都営)は売店がドンドン閉まっているので、自販機ないとツライですね。あと、自販機しかない田舎も…」
「この人正気だろうか。コンビニが2倍増えたら潰れるところも2倍になるだけ」
「じゃー自動改札も手動に戻したら駅員の雇用増えるっすね(笑)」

会ったこともない匿名氏からのため口はともかく、正気を疑われたあげく、しまいには笑われ者になったようである。これほどまでにも自販機が日本人にはなくてはならないものであり、愛されていることに気付かなかったようだ。スタバ族の不見識と笑われても仕方がないかもしれない。

日本における自動販売機の設置台数は500万台。うち270万台ほどが飲料販売機である。平均的な電力消費量は1KWであるから、ほぼ福島原発の1号機から4号機までの合計発電量に一致する。「ガイアの夜明け」によると都心部での設置密度は30人に1台にもおよぶという。ちなみに、酒類の自販機が許されているのは日本だけ、タバコの自販機が許されているのは日本をドイツだけである。WHOはこの状態を改善するように日本政府に申し入れている。

乗車券販売なども含めた自販機による年間売上総額は6兆円であり、コンビニにそれに相当する。ちなみに、コンビニ店舗数は45000、1店舗あたりのアルバイト雇用数は平均20人程度だから、90万人が雇用されている。コンビニの労働条件が悪いという議論は別の問題である。

自動販売機専業オペレータNo.1企業のジャパンビバレッジJTグループの売上高は1567億円、自動販売機設置台数全国24万台だから、1台あたりの年間売上は67万円あまりである。家庭で1KWの家電を使った場合の電気代は1時間20円程度であるから、自販機は1年に17万円ほどの電気代を支払っていることになる。じっさい設置業者の損益分岐は販売数が電気代を上回るかどうかである。

日本の田舎から自販機がなくなると不便になるという議論がある。因果関係が逆かもしれない。自販機が田舎の店の売上を取り上げた可能性が高い。また、自販機がなくなると、わざわざ店頭に行かなければならなくなるため、総販売額が減るという議論がある。タスポが導入されたときのコンビニにおけるついで買いは、コーヒー飲料だけでも10%の売上増があった。

日本以外では自販機をこれほど見かける国はない。米国や途上国では自販機泥棒が想像できる。欧州では美的感覚がことなり、自販機そのものに対する嫌悪があることは間違いない。自販機には何の恨みもないのだが、22時まで営業しているわが街の食品スーパーの入り口に、飲料自販機が何台も並んでいる光景はじつに不思議である。