Makiko Hirabayashi / Hide and Seek

Hide and Seek

Hide and Seek

HMVのニュースレターから、面白そうな新録CDをピックアップして、毎月数枚のCDをオーダーするように努めている。スイングジャーナルなどのジャズ誌は全く読まないので、最近のジャズシーンにどんな人がいるのか殆ど知らないし、正直あまり興味はないのだが、そう努めている。

店舗に行ってまでその務めを果たそうとは、全くもって思っていない。CDはシールドされているから、店舗に行っても立ち聞きできる訳ではないし、カバーの背表紙のタイトルで欲しいCDを探しだすのはとても面倒な作業だ。ネット通販なら、時間、労力、経費が省けて、CDによっては試聴までできる。

CD小売店の先行きは、書籍店以上に厳しいようだ。CD販売大手チェーンの新星堂が、債務超過を解消させるため、4割の人員整理をするらしい。新星堂は、小売チェーンでありながら、自社レーベルの「オーマガトキ」を通して一般のレコード会社が扱わないようなマイナーレーベルの良質な音楽を長年に渡って紹介 してきてくれた良心的な企業だと思う。応援したくても、私の住む街には新星堂の直営店がないので、せめてこれからは新星堂のショッピングサイトでCDを購 入するようにしようと思っている。賛同してくれる方がいてくれると嬉しい。

話が横道にそれてしまった。私が努めてCDを買う理由は、現代オーディオ的な悦楽を求めてのことなのだ。

私は、レコード用のオーディオシステムと、CD用のオーディオシステムを部屋ごと完全に分けてしまっている。本当はひとつのシステムにまとめてしまいたいのだが、レコードに合わせるとCDの音が気持ち悪いし、CDに合わせるとレコードの音が気持ち悪い。一時期結構じたばたしてみたのだが、何をやってもどっちつかずの音しか作れなかった。まとめられないなら分けるしかないと、結局は家族にとって甚だ迷惑な禁じ手を使ってしまって今に至っている。

私がジャズのレコードを好きな理由は、時代の雰囲気が味わえるからに他ならない。レコードを聴くときに、スピーカーと対峙して聴くようなことは殆どしないから、自分のいる空間に昔のジャズが昔の音で気持ちよく漂っているような状態が一番いい。雰囲気と音量は関係ないのだ。
ジャズの新録CDは、まさに今の時代の音。今を生きている私には、時代の雰囲気なんて必要ない。新録のCDの音では、空間に漂よっているような感じを受け ることもないし、音量を上げて聴かないとつまらない音にしか聞こえない。

普段は、CD用のシステムが置いてある部屋で過ごすことが多いので、必然的にレコードよりCDの音を聴くことが多くなる。新録CDの音は、ながら聴きに適するような音量だと、私にはどうもしっくりこないのだ。しっくりこないような音量で聴くと、音楽自体もつまらなく感じてしまうから、必然的につい音量を上 げてしまっている。
そうすると、音を浴びて体で感じるというオーディオ的な悦楽の世界が開けてくるのだ。若い時にはそういう楽しみ方をしていたし、いい音だと音量が大きくてもうるさくない。私は、家族が寝静まった深夜、大音量にどっぷり浸かりながら眠ってしまうようになってしまった。

この快楽は、かっこいいジャズで、良い録音じゃないと得られない世界なのである。だから私は、そんな新録CDを見つけ出したくて、努めて毎月CDを買っている。終わっても針をあげなくていいCDは、とても便利だ。

話の流れもあるので、今回は最近買ったお気に入りのCD、Makiko Hirabayashi / Hide and Seekを紹介しよう。レーベルはenjaで、2009年の録音。是非、目一杯ヴォリュームを上げて聴いてみて欲しい。

(JHS-JAZZ 山田)