『東洋経済 2月27日号』 掲載 「ゴルフざんまい」 放送分野と通信ソフトで後れをとる日本のゴルフ業界

この原稿を書いている時点で、プロゴルフ界ナンバーワンはスチュワート・シンクである。ナンバーツーはイアン・ポールターだ。ゴルフの成績ではない。じつはこの順位は「ツイッター」でのフォロワー数ランキングなのだ。

ツイッターとは140文字で書くミニ・ブログのようなものだ。自分のつぶやきをネットで公開する。それをフォロワーと呼ばれる読者がリアルタイムで読むことができるというものだ。シンクとポールター、それぞれ130万人と98万人の読者がいる。固定的なファン層だと考えてもよいだろう。

賞金だけではなく、広告収入も重要なプロゴルファーにとってみると、ファンサービスが欠かせない。これまでもコースでサインの求めに気楽に応じる選手は多くいたが、アメリカの最先端ではネット化が進んでいるのだ。

これまでのブログはある程度の文章量が必要だった。毎週末が試合のプロにとってみると、荷が重かったにちがいない。じっさい、石川遼はオフィシャルサイトを持っているが、ブログ更新は元旦付の記事が最後だ。ライバルの池田勇太はブログそのものをもっていないようだ。

ところがツイッターは、いわば1行コミュニケーションだから、試合中でも送ることができる。
じつはパーカー・マクラクリンという選手が試合中に携帯電話からツイッターで呟き、PGAから警告を受けている。試合中の電子機器使用はルール違反だったのだ。

アニカ・ソレンスタムツイッターを開始した。すでにゴルフスクールやコースデザインなどを手掛ける、実業家アニカは立派なビジネス用オフィシャルサイトをもっている。しかし、ツイッターでは娘の1歳の誕生日について呟き、気軽にスナップ写真を掲載しているのだ。

オフィシャルサイトの写真はプロによる現役時代のものだ。しかし、ツイッターに登場するアニカは少し太ってしまったようだ。あこがれのプロを身近に感じることで、さらに人気がでてくるだろう。

選手のツイッターだけではない。PGAiPhone用の無料アプリケーションなども用意している。試合中にリアルタイムで全選手のスコアを知ることができる。もちろん動画も見ることができる。ノーザントラスト・オープンのファイナルラウンドのハイライトを収めた動画のトップは石川遼だった。

放送の分野でもPGAの試合であれば日本にいても石川遼が出場する試合を生中継で見ることができる。ゴルフネットワークが放送している。

日本における放送と通信のソフトは決定的に遅れてしまった。もはや追いつけないかもしれない。日本のファンはダイジェストされた録画をみながら想像力を働かすしかないのだ。