『WORKERS』

Sebasti o Salgado: Workers: An Archaeology of the Industrial Age

Sebasti o Salgado: Workers: An Archaeology of the Industrial Age

昨日、NHK新日曜美術館の再放送を見ていた。「極限に見た生命(いのち)の美しさ 写真家セバスチャン・サルガドー」である。最初からポカンとしてテレビの映像を見ていた。あまりにインパクトが強い。写真というより絵画である。報道写真でもあるのだが、間違いなくアートでもある。

番組ではとりわけ、ブラジルのセーラ・ペラーダのガリンペーロの写真がすごかった。金鉱が入っているかもしれない土が詰まった袋を背負って、崖をよじ登る無数の屈強な男たち。安っぽい同情など感じさせない凄みがある。ローマ時代の奴隷を描いた映画よりもはるかに過酷と思われる現実の労働がそこにある。

あわてて本書を注文した。内容は新日曜美術館が軽いパンフレットだと思えるほど充実したものだった。1993年に出版された本書のために、サルガドはどのくらいの時間を使ったのだろう。おそらく人生すべてと答えるに違いない。戦場を駆けることで有名になったカメラマンたちよりも危険で厳しい取材人生だったと思わせる迫力がある。

ところで熱帯の農業を撮った写真をみて、『チョコレートの真実』を思いだした。先進国の子供たちが小遣いで買えるチョコレートを作るために、多くの途上国の子供たちが命がけで一日中働いているのだ。このような事実の前でなにもしないで、小沢対特捜検察などという茶番を見続けている自分に腹が立つ。

ちなみに本書のアマゾンのシッピング重量は6.8ポンド、つまり3キロだ。厚み約5センチのこの巨大本。30年後の子供たちはこの本を持っている親を誇りに思うであろう。30年後、貧するものはデータのみを持ち、富めるものは実体を持つであろう。