東洋経済 10月3日号特大号掲載 「ゴルフざんまい」

1月20日号の週刊ゴルフダイジェストによれば、基本的に日本ゴルフ協会や男女のプロ協会が主催する公式戦以外で放送権料契約が結ばれる試合はないだという。つまり、テレビ局はタダで中継できるのだ。しかも今年は、公式戦である日本プロゴルフ選手権の放送権も日本テレビに値切られてタダになってしまったという。

ところが、6月30日のスポニチによれば、日本テレビ系で放送された「ミズノ・オープンよみうりクラシック最終日」の平均視聴率が関東地区で今季ゴルフ中継最高の13・6%を記録したというのだ。ちなみに、6月の巨人戦の平均視聴率は8.9%だったし、8月12日のZAKZAKによれば今季の巨人戦の放映権は1試合あたり8000万円だという。

中継費などを含む制作費はテレビ局持ちだとしても、この大きな差は理解できない。むしろ、最近のゴルフブームを考えると、可処分所得の高い若者と女性の視聴者を獲得できるのではないのか。

僕が怒っているのは、プロゴルファーに放映権料が入らないことではない。タダなのに放送時間が短いからなのだ。たとえば、9月3日から6日まで行われたフジサンケイ・クラシックはメディアの冠試合であるにもかかわらず、三日目は1時間15分、最終日でも1時間30分だ。しかも、放送のほとんどはビデオによるダイジェストである。にもかかわらず、関東での最終日の視聴率は12.9%もあったのだ。

テレビはもはやライブメディアとしての役割を放棄したようなので、パソコンをALBAのサイトをつなぎっぱなしにしていた。石川遼の情報しかアップされないのが残念なのだが、すくなくとも1打ごとに速報される。情報のアップデートは1分毎なので遅延のイライラはない。たとえば、最終日の1ホール目は

○注目の第1打目は左のラフへ
○約100ヤードのセカンドはピン左奥5メートル
○バーディパットは左に外れ、スタートホールはパー

と、情報がつたえられるのだ。これは便利だ。ところがである。15ホールあたりでこの1行ネット中継がサスペンドされたのだ。テレビ番組が始まるから、瞬時に結果がわかるネットに圧力がかかったのであろう。テレビ局はゴルフ中継をしていない。ゴルフバラエティを作っているのだ。

ライブメディアがその役割を放棄して自滅するのは一向にかまわないが、ネットの前に立ちふさがるのだけはやめたほうがよい。そのうちにYouTubeTwitterを利用して、一般人がグリーンから中継しはじめるであろう。そしてそれを所有しているのはアメリカのネット企業なのだ。日本の新興ネット企業は官民法をあげて排除できたかもしれないが、こんどばかりは無理かもしれない。なにしろ視聴者はゴルフ中継を見たいだけなのだ。