「ゴルフは耳と耳の間でするスポーツ」 週刊東洋経済7月4日号 ゴルフざんまい掲載

週刊 東洋経済 2009年 7/4号 [雑誌]

週刊 東洋経済 2009年 7/4号 [雑誌]

ゴルフは耳と耳の間でするスポーツだという。つまり頭を使えというわけだ。止まっているボールを打つゴルフは、全てのショット前に思う存分考えることができる。

もちろんホールごとに攻略法を考える必要がある。帰ってから自分は本当にゴルフに向いているのだろうかと、とっぷり考えてしまうこともある。ともかく、考えることが好きなスポーツだ。

本当に考えるスポーツなのか、本の出版点数を調べてみた。じっさい、練習に励むよりも本を読む人の数が多いように思えたからだ。まずは日本のアマゾンで、スポーツのジャンル別出版点数を調べてみた。

野球は二つのサブジャンルに分類されている。野球・ソフトボールプロ野球メジャーリーグだ。つまり、する野球と見る野球の2つに分類されているわけだ。この2つを合わせた出版点数は2624点である。

野球に続く人気スポーツはサッカーだ。野球と同様、サッカーとJリーグに分類されている。合計は1478点だ。この2大スポーツ以降はマリンスポーツ・水泳の914点、テニスの781点、陸上競技675点、スキー・スノーボードの536点と続く。プレー人口や人気とほぼ比例しているような気がする。

ところが、わがゴルフはなんと4788点もあるのだ。少なくともアマゾンは、野球とサッカーを合わせたよりも多くのゴルフ本を認識していることになる。

売れている順に本のタイトルをくっつけてみよう。いまゴルファーが読みたい本は「パターが面白いように入るようになり、普通のサラリーマンでも2年でシングルになり、DVDもオマケで付いている本」だ。いささか無理があるような気がする。

しかし、ゴルファーは「なぜゴルフは練習しても上手くならないのかがわからないし、ゴルフクラブ選びが間違いだらけだったのかもしれない」と悩んでいる。とはいえ「ゴルフは突然うまくなることもあるし、練習嫌いはゴルフがうまい!」などと甘い言葉もかけてほしいのだ。

ところがじっさいは「書斎のゴルフ−読めば読むほど上手くなる教養ゴルフ」とだんだん体は重くなり、ついには「ゴルフで老いる人、若返る人」に及んで、ここが人生の分かれ目と切羽つまることになる。

いやはや、ゴルフは本当に耳と耳の間でするスポーツなのだ。じっさい、頭脳産業の最たる文壇でも丹羽文雄小林秀雄川口松太郎柴田錬三郎水上勉城山三郎など錚々たる作家がゴルフにいそしんでいた。このあたりは三好徹の『文壇ゴルフ覚書』に詳しい。