Paul Gonsalves / Cookin'
クラシックもだけれど、JAZZほどではあるまい。いわゆる「ベストもの」の類。 巷のジャズ評論家が薦めるベスト100とか、ジャズ・ジャイアンツの解説本のような類書、シーン別、レーベル別のコンピとか、ミュージシャンのベスト盤CD。 どれもがJAZZという音楽に誘ってくれるツールである。ただし、広く、浅く。ものによっては狭く、浅く。
どのレコード(CD)を、どういう順番で買っていくかによって、その後ののめり込み方が変わってくるから、たかがツールと侮れない。何事もきっかけや取っ掛かりは重要な問題だし、ガイドによってはせっかくのJAZZファン希望者をドロップアウトさせかねない。
他のジャンルと違って、JAZZのレコードはかなり古いアルバムでも何度でもCDで再発されている。再発される回数が多いということは、名盤の証であり、新たなJAZZファンをターゲットとしてそこそこのセールスが見込めるということ。名盤は時代を超えて、新たなJAZZファンを獲得し続ける。少しずつ、少しずつ。
今やネット時代。AccuRadio.comのAccuJazz辺りで、無料でJAZZを楽しむことができる。配信曲のタイトルやアーティスト名表記、収録CD情報へのリンクも完備されているので、JAZZのチューター役としてはお薦め。世界共通の名盤の中の1曲が次々と配信されているわけだから、ここをきっかけにして、気に入ったミュージシャンや、しっくりくるJAZZのタイプを掘り下げて行くことが容易。
http: //www.accuradio.com/jazz/
こうなると、レコード会社や出版社には申し訳ないが、JAZZを知るためのコンピCDも、名盤を紹介するガイド本も不要となってしまう。ある程度名盤に親しんだ暁には、立派なJAZZファンになってくれている筈だから、この段階で「幻の名盤」とか「知られざる名盤」のようなタイトルのJAZZ本を買って、自分の知らないCD(レコード)を買い求めていけばいい。できれば、最初のうちはスイング・ ジャーナルとかジャズ批評とか老舗のJAZZ雑誌は読まないでいて欲しい。JAZZ嫌いになって欲しくないので。
今回は、ARGOレーベルからリリースされた、Paul Gonsalves / Cookin' を紹介しよう。1957年8月、シカゴで録音。彼は、デューク・エリントン・オーケストラの看板テナー奏者。後でわかったことだが、このレコードをやっと入手して、 1曲目をmp3にしてピッツバーグの友人にメールで送って聴かせて自慢していた時、911テロの飛行機が彼の家の上空を飛んでいたらしい。そんな話とは無縁のすばらしいプレイ。脱帽もの。
(JHS-JAZZ 山田)