お座敷パンダコーポレーション:遺伝子工学ベンチャー


このビジネスは間違いなく人類史上空前絶後の規模になる。販売開始10年後の推定売上は最低でも年30兆円、利益は10兆円を超えるであろう。商品はただ一つ「お座敷パンダ専用笹ペレット」で、価格は1キロ入り袋がたったの980円。この商品を最低1億人が毎日10年間は買い続けることになる。いまから笑いが止まらない。時価総額は国家予算を超えるかもしれない。

仕組みは簡単である。まずは遺伝子工学や動物学の専門家などが必要だ。彼らにはパンダの遺伝子を研究してもらい、パンダが10キロ程度の大きさになったら成長を止める遺伝子を見つけてもらう。つぎに繁殖率を犬並みに上げる工夫をしてもらい、その過程でそのパンダが生きるためには「専用笹ペレット」を食べつづける必要があるようにしてもらうだけだ。

このようにして開発されたパンダ、すなわち「お座敷パンダ」の交配は自由だ。世界中で「奥様、今年はうちのロンロンちゃんと、おたくのカンカンちゃんから可愛い子パンダを取りましょうよ。」などという光景が見られることになる。その結果、お座敷パンダは自立的に増殖を繰り返し、地球上にあふれることになる。

考えて見てほしい。疲れて会社から帰ってきたら、子犬ほどのパンダがソファの上ででんぐり返しをしているのだ。朝起きたら、そのパンダが階段の手すりを滑り台がわりにして遊んでいるのだ。トイレにいくときはヨチヨチ歩きでついてくる。あらゆる家にはパンダ専用のブランコが置かれるであろう。ただし、笹ペレットを与えないとパンダは元気がなくなって、死んでしまうかもしれないのだ。それがたったの980円。

経済学において外部性が働くというのはこのことだ。お座敷パンダは飼い主が勝手に増殖させる。お座敷パンダコーポレーションはその行為には加担しない。つまり外部者なのだ。しかし、その果実は外部者であるお座敷パンダコーポレーションが全てとるということだ。

当然、お座敷パンダコーポレーションは利益をさらなる研究開発にまわすであろう。つぎなる動物は「お風呂イルカ」「テーブルキリン」などであろう。ベランダで飼えるバッファローなんてのも売れるかもしれない。