Abbey Lincoln / Straight Ahead

Straight Ahead

Straight Ahead

晦日は、紅白歌合戦を最初から最後まで通しで見たしまった。人生初のことだ。2009年の紅白には、今や国民的アイドルグループとなった結成10年の 「嵐」が初出場してしまうのだから、それはもう我が家の一大事である。年越しの夕食の後片付けをしている妻から、「いつ嵐が出てくるかわからないから、そ れまでしっかり見張ってなさい!」と仰せつかったのだ。

第60回の紅白のテーマは、「歌の力 ∞無限大」。普段「嵐」以外殆どJ-POPに触れることがない私にしてみれば、初めて聞く歌も多かったものの、演歌も含めてそれなりに新鮮で面白かった。 特に、「絢香」の「みんな空の下」と、「FUNKY MONKY BABY」の「ヒーロー」。おじさん、今頃何言ってんのと言われるとは思うけれど、初めて聞いたこの2曲には感動した。もうメロメロである。

絢香」の「みんな空の下」を聞きながら、つい「こんな曲を自分で書いて、ここまで歌い上げるなんて、こ の子は天才なんじゃないか」と思ってしまった。この歌のメロディーラインは、J-POPという垣根を超越していると思う。マライア・キャリー辺りが英語で カバーしたら、間違いなく全米No.1になるんじゃないだろうか?絢香が日本語で歌った方が絶対いいと思うけど。

そして、成毛さんも書いている「FUNKY MONKY BABYS」の「ヒーロー」。メロディーも素晴らしいが、この歌詞には脱帽した。日本のHIP-HOPユニットに魅入られたのは、「DefTech」の 「My Way」以来だ。そういえば、「My Way」を初めて聞いたのも紅白だったような気がする。その翌年、出張のお伴に「My Way」を入れたiPodをいつも持ち歩いていた。今年は「FMB」の「ヒーロー」を持ち歩こう。iPodではなく、携帯電話に入れて。

この紅白で、西田敏行は「歌の力って生きる力なんですね」との名言を残した。この2曲につ いては私も本当にそう思う。歌は、歌詞+旋律。過去の情景や、その時の自分の心象風景がまざまざと蘇ってくる。

私がJAZZを聴き始めた頃のこと。私の部屋で、「Linda Ronstadt」が唄う「What's New?」を聴いたKさんは、「悲しい唄なんですね」とポツリとつぶやいた。私はその一言でKさんにメロメロになったっけ。今はどうしてるのか なぁ〜・・・なんて、歌はおじさんを感傷にひたらせてくれる力を持っている。

今回は、Abbey Lincoln / Straight Ahead を紹介しよう。レーベルは Candid で1961年の録音。このレコードには、「Left Alone」が収録されている。Billie Holiday が作詞し、彼女の歌判を勤めていたMal Waldron が作曲した名曲なのだが、なんとBillie自身が唄った音源は残されていないのだ。この曲の初出は、Billie没後にBethlehemレーベルから リリースされた、Mal Waldron / Left Alone である。このレコードでは、Billieが唄っていたはずのメロディーラインをJackie McLeanがアルトサックスで歌い上げている。従って、歌としての初出はAbbeyのこのレコードが最初となる。ピアノは、勿論Malだ。むせび泣く Jackieのアルトもたまらないが、もともと歌詞がある曲は歌詞付きでも聴いておいて欲しい。

(JHS-JAZZ 山田)