『庭煙鉄道趣味 庭蒸気が走る毎日』
- 作者: 森博嗣
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2009/07/29
- メディア: 単行本
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とはいえ、一般的には『スカイクロラ』の原作者か、『すべてがFになる』で第一回メフィスト賞受賞者としてよく知られているはずだ。著者は日本を代表する作家の1人なのだ。けれども、本書を読めば、やはり著者は模型のほうに人生を傾けていることがわかる。
本書はその森博嗣の模型ブログの一部を書籍にしたものだ。2007年1月から2009年1月までのブログを単に印刷しただけだといってもよい。ちなみに模型ブログは2002年の第一次工事から始まっていて、本書は第五次工事分ということになる。
http://www.ne.jp/asahi/beat/non/loco/loco00.html
ブログの書籍化だから、ほぼ全ページフルカラーの写真だらけだ。鉄道模型というとなんとなくD51とかC62とか黒っぽいイメージがあるが、著者が愛するのは動輪が二つしかないような小型機である。したがって色もとりどりで、本全体でみるとじつに楽しい気分になってくる。赤、黄、オレンジ、緑、青の機関車や貨車が目一杯走っている。
庭園鉄道は憧れるものの、知識や技術、資金や場所を考えると普通の人は二の足を踏むであろう。HOゲージの模型を走らせることが出来るだけの旅館ができ、しかも予約で満杯だというのだから、その何倍も大きい鉄道模型はマニア垂涎の趣味なのだ。
ともあれ、ブログでまったく同じものが読めるのだから、3000円もする本書を買う理由はないはずだ。著者は「まえがき」で「でも、考えてみれば、無料で見ることができる実物の鉄道車両を、わざわざお金をかけ、苦労して縮小するのだって、同じくらいに不思議かもしれません」といっている。「趣味というのは本来無駄なものではないでしょうか」とつづく。そのとおりである。趣味として本を買うボクとしては、ブログをそのまま本にした稀有な本として買ってみたいわけだ。
とはいえ、本書を買う前に著者のブログを読むことをお勧めする。そして「どーしても書籍で欲しい人」だけが本書を買うべきだ。ちなみに本書には南庭園工場前→西庭園薔薇駅という仮想の切符がブックマークとしておまけで付いてくる。じつはボクはこれが欲しかったのだ。