中古クラブと食べ残し 『東洋経済 5月2・9日号』掲載

昨年はドライバーを一本、ユーティリティを二本、パターを一本買った。じつはすべて中古品である。へたに話題の新製品などを持ってコースに出ると、ライバルが揶揄してくるに違いないからだ。

悪いショットを打てば「クラブが泣いてるぞ」と声がかかるのはあたりまえ、良いショットを打っても「ナイスクラブ!」と容赦がないはずだ。しかし、中古クラブであれば、黙って見逃してくれるはずなのだ。

四本とも自宅近くの中古ゴルフクラブのチェーン店で買った。最近ではネットでも中古品が買えるらしい。ところが、大手のゴルフ用品店やスポーツ用品店では中古品はあまり扱っていないようだ。メーカーが嫌がるのかもしれない。

ところで、ゴルフ用品と同様に趣味性の高いスポーツカーの世界では、BMWなどのカーメーカー自身がオーソライズドカーというメーカー保証の中古車を販売するのが当たり前になってきている。

カーメーカーは自らがきちんと車を整備し、保証つけることで中古車の販売価格を高く維持したいのだ。結果的に中古車の仕入れ価格も高くすることが可能になる。カーメーカーの真の狙いはここにある。

ユーザーはたとえ新車価格が高くても、中古車として売るときに高く買ってもらえることが確定しているのであれば、使用期間あたりの費用はむしろ安いと考えるはずだ。つまり、中古品の仕入れ価格の保証があれば、高価格の新製品も売れるという理屈なのだ。

大手住宅メーカーの保証も二〇年から五〇年になりつつある。さらに住宅の持ち主が変わっても長期間の保証が続くことで、このメーカーの中古物件価格は上がり、結果的に新築着工数は増え、高価格を維持することもできるであろう。

ゴルフのもう一つの期間費用は会員権だ。バブル期には期間収益だったのだが、いまでは会員権価格が下がり続け、日本全体では巨額の期間費用が発生していることはずだ。

かつて数億円もした会員権がただ同然になっていることもある。理論的にはプレー一回あたりの費用は数百万円にもなるはずだ。しかも、最近ではビジターでも予約を受け付けてくれる、かつての高級ゴルフクラブも現れた。

このようなクラブでプレーをするときには、前夜に最高値と現在価格の差を計算をしておくことにしている。そして当日は理論的な価格と実際のプレーフィーの差を感じながらリッチな気分を味わうのである。

しかし、このようなクラブの食事は平均よりはるかに高いような気がする。いくら中古好きでも、食事だけは誰かの食べ残しをいただくわけにはいかない。