『バチカン・エクソシスト』
- 作者: トレイシーウイルキンソン,Tracy Wilkinson,矢口誠
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2007/05/29
- メディア: 単行本
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本書によればエクソシストたちは10年ほど前からその数を10倍にも増やしているらしい。ローマのエクソシスト長と呼ばれる人物が10年ほど前に国際エクソシスト協会を発足させたことに端を発している。しかし、実際には映画「エクソシスト」の大ヒットと教皇ヨハネ・パウロ2世がサタンという名前をよく使い、しかも悪魔祓いに好意的だったことがそもそもの原因らしいのだ。本書では明示されていないが、アメリカにおけるキリスト教原理主義の台頭にカソリック側が対応したとも考えられる。
エクソシストたちは映画のままに悪魔に憑依された人物に接する。そして、悪魔の憑依された人物はときには口から電池やねじなどの異物を出すこともあるという。エクソシストを頼るのは田舎の主婦や都市に住むダンス教師だけではない。科学者であるはずの医師ですらもエクソシストを頼る。
いっぽう、イタリアでは悪魔カルトというグループが増加している。2005年には〈サタンの獣〉というグループが摘発されたのだが、彼らは3人の友人を拷問して殺したとされる。イタリアのある種の閉塞感が生んだ現象であろうが、日本人のほとんどはそんなことは全く知らずに世界遺産番組をため息まじりにみては、イタリアに憧れ続ける。
日本人にとっての救いは訳者解題で、日本には公式なエクソシストは存在していないと説明されていることだ。このなかで、日本には神と悪の2項対立という概念がないことが原因ではないかと匿名のキリスト者は語っている。
多くの日本人にとっては天照大神も、キリストも、アラーも、お釈迦様も神だという印象が強いだろう。もし道路に十字架とコーランが落ちていたらそれを踏みつける人は少ない。バチがあたるという概念があるからだ。つまり、日本は八百万神原理主義者の多い国なのだ。