『偽装農家』

飛鳥新社「Family bool series」の7冊目である。100ページに満たない薄い本だ。『文藝春秋』などの総合雑誌に掲載されている記事よりもかなり長く、単行本や新書よりもかなり短い。活字だけで714円だから、安いのか高いのかはなんとも評価しにくい。じつはすでに出版されている『食卓からマグロが消える日』『エネルギー革命メタンハイドレート』『グーグルが本を殺す』の3冊読んでいるのだが、今回はじめてシリーズだったのだと気がついた。買っていない本の著者には田母神俊雄や不肖・宮島などがいるので、シリーズの雰囲気はなんとなくそっちの方向なのね、という感じで読めば良いかもしれない。

薄い本なのであまり中身を紹介しにくい。まずは各章とその章中で目立つ項目を、コメント付きで目次から抜粋してみよう。

1.食糧自給率の空騒ぎ
−食糧自給率向上で国家は破滅(ひゃ−)
戦後60年以上、穀物価格が下落傾向にある(そうなのかぁ)
−肥える先進国と飢える途上国(うん、これは大問題だと思う)

2.農家に都合の悪い事実
−農業ブームの胡散臭さ(うーん、長期的にはいけてると思うけど)
−消費者のモンスター化(ついでに高齢化も)

3.偽装農家の現実
−片手間でできる米作り(事実です)
−農地の価値が10倍、100倍に(そうなのかぁ)

4.違法転用を黙認するメカニズム
−都市計画が滅茶苦茶な日本(本当にそう思います)
農水省のホンネは耕作放棄と転用の促進 (いくらなんでも)

5.偽装農家をなくすための提言
−「平成検地」を実行せよ(同意)
−「まことちゃんハウス」の問題(見にいきました。派手でした)

6.思い切って農地を減らす
−日本の農業に未来はあるか(ないことはないと思う)
−外国人の就農(良いアイディアかもしれません)

ついでながら、片手間でできる米作りについては事実だと思う。友人の元官僚から聞いたのだが、本人の実家は特定郵便局で米作農家だというのだ。そりゃご両親忙しいねと聞くと、いや米作りだから電話一本で田植えから収穫までJAから人が来てやってくれるんだよね、と笑っていた。

ともあれ、この本の著者は『日本の食と農』も出版している。これも非常に良い本で、サントリー学芸賞BizTech図書賞を受賞している。ちなみにボクはBizTech図書賞の審査員を仰せつかっており、この本に一票入れている。

日本の食と農 危機の本質 (シリーズ 日本の〈現代〉)

日本の食と農 危機の本質 (シリーズ 日本の〈現代〉)

南水北調プロジェクト、中部ルートの移民が開始@CRI

http://japanese.cri.cn/881/2009/08/16/1s145356.htm
食糧問題についてコメントいただいたので、最近どうなっているのかと中国の南水北調について検索したところ、8月のニュースを発見した。南水北調とは長江と中国北部を結ぶ巨大運河プロジェクトのことだ。3本のルートがある。すでに2002年には着工されていて、伸延により今回は32万人ほどが移民するという報道だ。最近大騒ぎになっている「八ツ場ダム」に沈む村は当初300戸だったらしい。規模がまったく違う。

ところで、このプロジェクトはまさに地球規模の工事である。たんに下流を低くするだけでは水は流れないらしい。地球の自転による遠心力を計算する必要があるのだ。月の潮汐力も考えなければならないような気がする。