週刊朝日12月11日号 「ビジネス成毛塾」 『キリマンジャロの雪が消えていく』

キリマンジャロの雪が消えていく―アフリカ環境報告 (岩波新書)

キリマンジャロの雪が消えていく―アフリカ環境報告 (岩波新書)

本書のタイトルは『キリマンジャロの雪が消えていく』と抒情的だし、副題も「アフリカ環境報告」で、地球温暖化を恨むばかりの、ありふれた書籍の一冊であるように見える。

しかし、本書において温暖化問題は議論の一部でしかない。人口爆発とその影響、天然資源とガバナンス、先進国の援助とその光と影など、多様な観点からアフリカの現在が描き出されている。

これからは本書を読んでいることを自明としてアフリカに関するさまざまな議論が進むようになるかもしれない。少しでもアフリカに関わるビジネスマンの必読書であることは間違いないだろう。

第1章はアフリカの地理と気候と有史以前の歴史についての概観だ。わずか23ページなのだが、事実だけを、数字を使い、過不足なく、流れるように記述している。一文字の無駄もない。

これほど完璧な概況レポートを見たことがない。ビジネスマンが担当する地域や市場についてレポートする場合、このような文章をお手本とするべきだと思う。

それにしても、アフリカの苦悩はあまりにも大きい。厳しすぎる気候と大地の上に、人間が大量に生まれ大量に死ぬ。政治は混乱し、人々は殺しあうか、絶望するかを選らぶしかない。野生動物は絶滅に向かういっぽう、素知らぬ顔をして大国が天然資源を買い占める。

そもそもアフリカ人の不幸の発端を作りだした先進国が援助に転じても、副作用が伴うために最善策が見つからない。たとえば小麦粉を配給すると、雑穀に比べ高温で焼く必要があるため、樹木が伐採されて砂漠化してしまうことがあるという。

アフリカ問題や環境問題に人生を捧げたといっても良い著者をして「あとがき」で、「アフリカを救い出す特効薬は見つかっていないし、たぶん、そうしたものはないだろう」となかば絶望しているほどだ。

著者は本書がアフリカに関する最後の著作になるというのだが、アフリカの終焉を告げられたような気がするのは評者だけであろうか。

事業仕分け スポーツ編

http://blog.kawailab.net/article/134065348.html

じつに要領よく、きちんとまとめられている。ノーベルな人々も、スポーツマンも狡猾な官僚に騙されて、踊らされているように見えるのはボクだけだろうか。ボクが怒りを感じるのは、日本人が誇るべきノーベル賞受賞者やアスリートを晒しものにしてまでも、予算を獲得する官僚に対してである。それにしても、メディアは官僚のストーリーに良く乗ると感心する。

『ルワンダ中央銀行総裁日記』

ルワンダ中央銀行総裁日記 (中公新書)

ルワンダ中央銀行総裁日記 (中公新書)


kiokadaさんからいただいたコメントに対するレスポンスである。本書は20才の時に読んだ。読了後、日銀に入りたいと熱望した、外務省でももちろん良いと思った。しかし、学力が全くついていかなかった。本当に悲しかったのは覚えているが、結局すぐ忘れて別の本を読んでいたのだろう。もちろんお会いしたことはないが、服部正也さんはいまでもボクのヒーローである。

1965年のルワンダに家族とともに中央銀行総裁として就任した著者は、「はじめに」で本書を書く理由として、ルワンダ経済の発展過程を紹介するということだけではなく、「アフリカ諸国に対する日本人の感心が、もっぱら資源とか市場をかの、現実的な利益を中心としており、国民というものに対しては、あまり考慮が払われていないことに対する危惧」だというのだ。

恐るべき言葉だ。30年たっても全くあてはまるし、中国などはまだそのことに気付いていない。本書の若干でも読み直すだけで、kiokadaさんのいうように、確かにアフリカをまだ見捨ててはいけないと確信できる。もちろん『キリマンジャロ』の石先生も本当に見捨てているわけではないと思う。

このころの中公新書シュタイナー学校を描いた子安美知子の『ミュンヘンの小学生』や上山春平の『神々の体系』などが記憶にある。たぶん、中高生のときに読んだ会田雄二の『アーロン収容所』が中公新書との付き合いの始まりである。