『立花隆の本棚』

- 作者: 立花隆,薈田純一
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2013/03/08
- メディア: 単行本
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本書の制作にあたってははまず写真が撮られた。しかも書棚1段1段をレーザー墨出し器を使って計測し、精密撮影したうえで全景を合成するという、非常に手間のかかるマニアックな手法で撮影された。あまりに膨大な蔵書のため、1万回にわけて撮影されたという。1カットに20冊が写り込んでいるとして、その数20万冊。御年72歳の立花隆が1歳から本を読み始めたとして(たぶん読み始めたのだと思う)毎年2800冊ほどの本に目を通したということになる。1日にして8冊弱である。
で、その写真を見ながら立花隆が語り起こしたのが本書なのだ。有名なネコビルの1階を第1章とし、その後ネコビルの2階、3階、地下1階と2階、階段、屋上、3丁目書庫+立教大学研究室の7章建てだ。ネコビル1階の第1章には40弱の小見出しが立てられているのだが、そのなかから少しだけ書きだしてみよう。「日本近代医学の始まり」「分子生物学はこんなに面白い」「フロイトはフィクションとして読む」「古本屋の商売」「嘘が面白い」「ブッシュの1日」「中国が原発大国になる」などなど、HONZの方向性が間違っていなかったことを証明できそうな羅列である。
立花隆の語りは本を1冊づつ説明するというのではない。テーマ毎に集積してある本を眺めながら、それに関連する薀蓄を尽くす。しかも、その間にグーグルによるテキストのデータ化と紙の本の将来予測やら、政治・経済の本は玉石混交だが圧倒的に石が多いことやら、自身の執筆スペースやらについても語っているため、本好きにとっては格好の読み物に仕上がっているのだ。
これだけの厚みがあっても、読み通すには時間がさほどかからないであろう。本書の読み方のおススメはポストイット付箋を表紙の見返しにつけておき、気になったところにどんどん貼り付けおくことだ。これからの買い物に役立つであろう。1ページ目から読み進める必要もない、面白そうなテーマを選んで読んでも良いはずだ。トイレに置いておいて、ともかく写真を眺めるだけでも良い。重いのだがバカンスに持って行って、海辺のパラソルの下で読むにもじつに向いている。
帯には「圧倒的な知の世界」とあるが、お気軽に手にとって日常のなかで楽しめる読み物であると、あえて言っておきたい。厚みはあるがけっして本棚の飾りでは終わらない本だ。えっ?立花隆では敷居が高いって?そんな方はとりあえず『ノンフィクションはこれを読め!』か『面白い本』をどうぞ。