『邪悪な植物』
- 作者: エイミースチュワート,Amy Stewart,山形浩生,守岡桜
- 出版社/メーカー: 朝日出版社
- 発売日: 2012/09/01
- メディア: 単行本
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さて、本書は『邪悪な虫』と姉妹本として同時に出版された。『邪悪な虫』など気持ち悪くて触れたくもないが、植物なら大丈夫。どんなに邪悪なんだろうとパラパラとメージをめくってみよう。最初に登場するのは「トリカブト」。この項目では「クラーレ」などの矢毒植物も取り上げられている。都会では邪悪な植物というよりも邪悪な人々が使う植物というべきかもしれない。
「コカノキ」はもちろんコカインを生産する植物だ。大昔にはコカ・コーラには微量のコカインが入っていたが、いまではコカインを抜いたコカノキの抽出物が入っているだけだ。それでも異様な感じがする。ちなみに「ペプノキ」という植物はない。ほかにも「ベラドンナ」、「麦角」、「大麻」、「ケシ」、「マンドレイク」など、本書では麻薬様植物のほとんどがカバーされている。
麻薬様ではない植物として「クズ」は異質だ。19世紀後半に日本からアメリカに持ち込まれたクズは土壌流出を食い止める植物として珍重された。しかし、いまでは全米で3万平方キロ近くがクズで覆われているという。クズは除草の対象になっているというのだ。同様に繁殖し過ぎて困る植物として水生の「ホテイアオイ」がある。
「ソテツ」の種子はペットが2,3粒食べただけでも死に至る可能性があるという。さらに、ソテツは筋萎縮性側索硬化症(ALS)の変異型の原因にもなりうるという。ソテツを食べてはいけないのだ。ヒッチコックの恐怖映画「鳥」ではカモメたちが異常行動をするのだが、その原因はエサのセグロイワシを汚染した有毒藻類の異常発生だったらしい。それが判明したのは映画から40年以上あとだったという。
というようなトリビアが図版とともに延々と続くわけで、このタイプの本が好きな人にとってはじつにヤバいわけである。とりわけトイレに置いておいて、1項目ずつ読んでみようという趣にはぴったりとあてはまるデサインだ。朝日出版社はそこを間違いなくピンポイントで狙ってきたに違いない。今年のトイレ本大賞の候補として推薦しておく次第。