『外資系の流儀』

外資系の流儀 (新潮新書)

外資系の流儀 (新潮新書)

国内の外資系企業で働いている人は51万人、日本の雇用者数は5140万人だから、わずか1%だ。近そうで遠い存在なのが外資系である。著者がテレビドラマの女性プロデューサーに、外資系のイメージを聞いてみると「物腰が柔らかく、いつも微苦笑。言葉は丁寧」「男女ともに、なぜかコートはカシミヤのロング丈」などだそうだ。

では、実態はどうなのだろうと調べてみたのが本書である。著者自身もNHKのディレクターを経て、外資系戦略コンサルティング会社に入社、外資系テレビ局にも勤務した経験のあるキャリアウーマンだ。

外資系では入社した日から企業文化に染まる必要があると著者はいう。初日からフル稼働を覚悟し、創業者の理念に染まり、あたかもカルトのような企業文化に馴染まなければならない。

その後、さらに生き残るためには、朝早く出社し、極限状態で長時間働き、緊張感のなかで英語を磨き、会社の悪口を絶対に言わないという不文律がある。

しかし、それらを守っても成長しない者は簡単に辞めさせられる。生き残るだけでなく外資系で成功しようと思うのならば、なによりも働き続けることができる体力が必要だと結論付ける。いやはや外資系で働くというのは本当に大変なことなのだ。

しかし、本書のためにインタビューした外資系経験者のほぼ全員が「外資系で働いてみてよかった」と答えている。成功者はもちろん、身体が弱くて辞めた人も、理不尽にクビになった人も、外国人上司にこき使われた人も、口を揃えて良かったと答えているのだ。

それを著者は「外資系の矜持」だと説明する。どんなにつらい目にあっても、世界に挑戦し、学び、成長したといいう矜持だ。さにあらん。

(産経新聞 2012年10月13日掲載)