『論語なう』

6月のHONZ朝会で高村和久が「今月読む本」の一冊として取り上げていたが先手必勝。超速レビューしてみよう。表紙を一目見て、論語を無理やりツイッター風味にし、現代日本の四方山を皮肉る、お手軽な風刺本であろうと思っていたのだが、意外にも違っていた。たしかにツイッター言語は生きている現代語だから、本書は正統な論語の現代語訳になっているのだ。

子曰く、巧言令色(こうげんれいしょく)、鮮し仁(すくなしじん)。


弁舌さわやかで、いつもにこにこスマイル。
こういうやつって、なんかうさんくさいよね。

鳩山由紀夫みのもんたの顔を反射的に思い出してしまったのだが、本書の解説には一切そのような記述がない。当時の儒者とは葬儀屋さんのことであり、儒者の1人であった孔子は派手な葬儀のあり方に反対したのだと解説する。そして孔子の出発点は「心のこもったお葬式」を提唱した葬祭プロデューサーだと結ぶのだ。

子曰く、これを知る者はこれを好む者にしかず。これを好む者はこれを楽しむ者にしかず。


どんなことでも、知識をもっているだけのやつは、好きでやっているやつに勝てない。 好きでやっているやつは、楽しんでやっているやつには勝てない

最近はオリンピック選手などが出発前の感想を聞かれて「楽しんできます」と答えることが多くなってきた。やはり強くなるためには状況を楽しまなければいけない、などというようなことが書いてあるかと想像したのだが、あにはからんや本書はきちんと孔子の私塾の様子などを紹介する。そこでは儀式を学ぶとき、孔子が弟子たちとジャムセッションのようなものをしていたらしいという。

子曰く、郷原は徳の賊なり


既得権益ずっぽりの町の名士こそ。道徳の敵だ!


現代では霞が関や丸の内、全国津々浦々の文字通りの町の名士たちに読ませたいツイートである。それにしても2500年前から変わらぬ光景なのだ。ため息がでる。そんな読みかたもできる本である。

本書は論語ツイートとその解説で成り立っているため、これ以上の内容紹介は営業妨害になるかもしれないからやめておこう。論語ツイートだけを読みたいかたは@KongziNowをフォローされるとよいだろう。しかし、本書の本当の魅力は見開き左ページに書かれている正統な解説にあると思う。個人的には目から鱗が何枚か落ちたということを報告しておこう。