『死ぬまで編集者気分』
- 作者: 小林祥一郎
- 出版社/メーカー: 新宿書房
- 発売日: 2012/04/01
- メディア: 単行本
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成毛眞ブログのなかで人気エントリーだった「内モンゴル小旅行記」〈われながら非常に面白いので是非ご一読を!〉にも登場する。恐れ多いことだが数年間マイクロソフトで同僚だったのである。本書でも194頁にボクは悪役としてでてくる。小林氏は北方4島を領土・国境紛争地帯としてどの国にも属さないと記述するべきであると主張したのだが、マイクロソフトのマネジメントとしては日本の領土として記述するよう強要したのだ。経営が編集権を犯したといってもよい。誤解ないように付け加えると小林氏は中印国境紛争も印パ国境紛争もすべからく紛争地帯とすることで、百科事典として領土・国境紛争の存在を明らかにするべきだという立ち位置であり、けっして北方4島が日本の領土ではないという立場ではない。
じつはこの事件の数年前、ボクのイギリス人同僚がサウジアラビアで逮捕投獄された。Windows3.1のアラビア語版の開発にあたってイスラエルのソフト開発会社を下請けとして使ったという疑いであった。マイクロソフト本社は平謝りに謝って、WSJにお詫びの全面広告を出したほどである。やっとの思いで監獄からでてきたこの男の次の赴任地はインドだった。彼はインドでまた逮捕投獄されたのである。このとき、『エンカルタ』はインド・パキスタン・中国の国境紛争地帯であるカシミールをパキスタンの領土として記述していたのだ。それ以来、マイクロソフトはこの問題に非常に神経質になったのだった。ともあれ、例のイギリス人同僚は再度助け出され、アメリカに赴任した。驚くことに彼はマイクロソフトの社員であったにも関わらず、あのアーノルド・シュワルツネッガーと共同でピザのチェーン店事業を始めたのだった。世界は何でもありなんだということをこの男から学んだ。
話がずれてしまった。本書は小林氏の出版私史である。冒頭から花田清輝、吉本隆明、志賀直哉などの名前がポンポン飛び出す。柳田國男や大江健三郎とも親交があった。梅棹忠夫、小松左京、加藤秀俊らと毎月討論会を行っていた。安倍公房、大江健三郎、石原慎太郎の座談会の司会もする。しかし、本書は老編集者の思い出話にとどまらない。雑誌創刊の裏話、百科事典の営業政策など生々しいことが描かれていてじつに興味深い。本書の後半は『新日本文学』に著者が寄稿した文章を選び出したものだ。
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http://d.hatena.ne.jp/founder/20100208/1265628115