『鰊場育ち』
- 作者: 葛間?
- 出版社/メーカー: 幻冬舎ルネッサンス
- 発売日: 2012/01/25
- メディア: 単行本
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版元は幻冬舎ルネッサンスだから自費出版である。自費出版といえばご老人が人生の最期に自叙伝や旅行記などを身内や知人に配るための手段と思われがちだが、最近は事情が違ってきている。幻冬舎ルネッサンスからは10万部を超えるベストセラーが出ているし、2月だけでも7点の書籍が重版している。本書も写真やイラストなどを豊富に使い、立派な読み物であり民俗学資料にもなっている。
本書には鰊漁で使われる道具や動作を示す「枠網」「間地」「関澗」「ガンゼ」「カムイチュプ」「やん衆」「アバ」「サキリ」「ドンザ」「マネ」「くき」「出面帳」「尻つなぎ」「木架場」「角胴」「キリン」「ジョンガラさん」などという言葉がちりばまれている。すべて聞いたことはないのだが、どこか懐かしい匂いのする言葉だ。ところで、北海道電力唯一の原発である泊発電所はその旧鰊場に立地しているのだ。そこでは鰊漁で使われる言葉が消え、プルサーマルなどという言葉に切り替わった。泊原発は「一網千両」といわれた鰊漁という宴の墓碑のごとく屹立している。