『こころの免疫学』 週刊朝日9月30日号 「ビジネス成毛塾」掲載
- 作者: 藤田紘一郎
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2011/08/01
- メディア: 単行本
- クリック: 1回
- この商品を含むブログ (10件) を見る
その問題に精神医学ではなく、寄生虫学や感染免疫学を専門とする医学者が答えたのが本書『こころの免疫学』である。目に見えない脳の中ではなく。目に見える腸の中に注目して、患者にとっても具体的な処方箋を出している。
書評の掟を破って、いきなり結論のいくつかを紹介しよう。「やる気」を出すための神経伝達物質ドーパミンも、幸せを感じるために必要なセロトニンも、その前駆体のほとんどすべては腸で作り出されている。そして、腸内細菌がその前駆体を作りだすカギなのだ。ここでは腸内細菌を増やし活性化する食事法について細かく書かれている。
著者はさらに糖尿病とうつ病との連関、コレステロールとうつ病との関係などにも触れ、糖尿病を劇的に改善する糖質制限療療法も自分で試してみている。わずか2週間で血糖値も中性脂肪もうつ気分も劇的に改善したという。
じつは評者も2か月前から糖質制限食に切り替えている。著者と同じく2週間で体重が4キロほど落ちた。この制限食のよいところは、肉魚野菜をたらふく食べてもよく、赤ワインも焼酎も飲み放題だということだ。夕食は居酒屋のメニューのごとくなるのだが、すばらしく効果的だ。本書は最新の食に関する医学の知見を判りやすくとりあげていて過不足がない。
社内食堂のメニューや会社の健康管理にこの知見を応用することで、気分障害に悩む社員を減らし、生活習慣病による生産性の低下も防ぐことができるかもしれない。会社の病を治すまえに、社員の病を治すのが経営の本質なのかもしれない。