秋の夜長に備えて買いためてある本 付録

「秋の夜長に買いためている本」など書籍リストのエントリは、実際に買った本の20%程度を紹介したものである。ここでは期待できそうな一般向けの読み物だけを選んでいる。マニアや研究者向け、MOOKや、読んでみなければわからない新人や、自費出版系は普通は紹介しない。ボクがどんな本を買っているかに興味がある方もいるようだから、今回はその中から何点か紹介してみよう。

完全版江戸の風景 (双葉社スーパームック)

完全版江戸の風景 (双葉社スーパームック)

『完全版 江戸の風景』
ちょいと江戸好きであれば買って損はないMOOKである。表3までいれて145ページのフルカラー大判本である。当時の写真、浮世絵、CGをふんだんに使って江戸を再現する。霞が関大手門前、町人長屋などの再現につづいて、外国人によるスケッチ画、お江戸の12か月やファッション、長屋の女房たちと吉原風景、江戸の川岸や街道、最後は都内に残る江戸情緒だ。江戸好きなら4時間はたっぷり楽しめるから1時間400円。さらに言うと、河竹黙阿弥もの歌舞伎が好きな御仁には必携かもしれない。花魁の古写真はまさに「助六」そのものなのだし、現代風の美女であることに驚く。

日本刀ハンドブック (目の眼ハンドブック)

日本刀ハンドブック (目の眼ハンドブック)

『日本刀ハンドブック』
まさに日本刀のハンドブックである。日本刀の種類、造込みの種類、切先や刃文など各部の詳細解説、鑑定の基礎などの概説のあと、平安から現代にいたる時代別の刀を網羅する。第3章は「居合道と日本刀」となっているから、日本刀はけっして観賞用の骨董ではなく、現代に生きている武器であることがわかる。内容は網羅的で図版がじつに豊富だ。紙質もハンドブックにふさわしく、資料として耐える作りだ。これで1600円というのは非常に安いのだが、買う人はよほどの刀好きか本マニアのどちらかであろう。居合道では新陰流が有名だが、警視流というのもあるのだそうだ。

古代ローマ帝国トラベルガイド

古代ローマ帝国トラベルガイド

古代ローマ帝国 トラベルガイド』
厚い色紙を使った変形版で、太い糸を使った糸綴じ製本だ。小さな豪華本である。装丁・造本が2人がかりだ。古代人が書いた観光ガイドブックという仕立てなのだが、内容は古代ローマ入門の域を超えていない。コンテンツというよりは、モノとしての本として買ってしまった。 日本の新刊本はあらゆる外国と比較して、圧倒的に美しく凝っている。優れた装丁家がいるからだ。「装丁家人名読み方辞典」などというサイトがあるのは日本だけではあるまいか。
http://hiramatu-hifuka.com/onyak/sote-mk1.html

装丁の仕事174人 (玄光社MOOK WORKBOOK ON BOOKS 8)

装丁の仕事174人 (玄光社MOOK WORKBOOK ON BOOKS 8)

『装丁の仕事174人』
承前。ついでながら、装丁についての本はこれがお勧め。2010年版だ。しつこいようだが、本の電子化について日本の事情は外国にくらべて少し違うと思う。逆に、美しい本を造るためのアートワークや印刷・製本を輸出するようになるかもしれない。

出雲大社の暗号

出雲大社の暗号

出雲大社の暗号』
じつはこのたぐいの本が高校時代から大好きなのだ。書店では古代史ミステリーという確立したジャンルだ。天皇家関連の古墳が発掘できないがゆえに残る、さまざまな古代ミステリーを日本人は時代を超えて楽しんできた。日本は良い意味でも悪い意味でも、神話の国なのである。本書も「出雲大社の謎-大国主神はなぜ、出雲も常駐するのか」「出雲大社の暗号-朝廷はなぜ、出雲神の祟りを恐れ続けたのか」など、いつもの古代史ミステリーのようで安心できるし、、いつもとは違う要素がでてくればお買い得という感じなのである。これはまるで「歌舞伎」だ。踏襲されてきた伝統様式の中から、当代の役者による新しい解釈を見つけて楽しむという芸能である。

「官僚は犯罪者」は世界の常識

「官僚は犯罪者」は世界の常識

『「官僚は犯罪者」は世界の常識』
本書のたぐいも「歌舞伎」にちかい。国営メディアのNNKと自虐史観朝日新聞というような筋立てで、あとはディテールを積み重ねていく。官僚は寄生虫だし、政治家は無能だと続く。ある意味で様式化しているために、現実味がなくなり、言葉を楽しむようになってしまう。読みながら「たしかにそのとおり」「てやんでー、べらぼうめ」と膝を打ちつつ、溜飲をさげてしまう。これではかえって逆効果になりかねないのだが、それも日本という大芝居の楽しみである。