秋の夜長に備えて買いためている本 単行本編 第2部

秋の夜長用第2部である。しかしよく考えてみると、秋の夜こそは飲みに出かけることが多い。本を片手に吉祥寺のハモニカ横丁とか井之頭公園脇あたりでダラダラしていることが多い。大好きな季節になってきてうれしい。札幌出身なのだが、冬はキライなのだ。

ところで、今日は『無菌室ふたりぼっち』の発売日だ。書評が早すぎたのであらためてリンクを張っておくことにする。
http://d.hatena.ne.jp/founder/20101013/1286965757


厄介な翻訳語―科学用語の迷宮をさまよう

厄介な翻訳語―科学用語の迷宮をさまよう

『厄介な翻訳語
この本は掘り出し物であった。60あまりの科学用語の由来や誤訳を語っているエッセイ集である。取り上げられているのは「とうもろこし」「白鳥の歌」「交尾行動」「人口」など多彩だが、それぞれのテーマはさらっと扱って、どんどん横道に逸れていく。その横道への逸れ具合がじつに素晴らしいのだ。本書については独立した書評として紹介してみるつもりだ。通勤電車で片道に一篇をじっくり読んで大満足という本である。

恐竜再生

恐竜再生

『恐竜再生』
進化発生生物学はエボデボ(Evo-Devo)というのだそうだ。著者はジェラシック・パークの監修者のモンタナ州立大学古生物学教授で、分子生物学や発生学の研究者とともに恐竜の再生を研究しているらしい。書き手は「ニューヨークタイムズ」科学部のプロだから文章は悪くないであろう。とはいえナショジオ物だから「まあ、そうだよね」ということになる可能性も高い。ナショジオは読者や視聴者の期待値のど真ん中にボールを放り込む癖があるのだ。マーケティング的には正解なのだろう。

宇宙を解く壮大な10の実験

宇宙を解く壮大な10の実験

『宇宙を解く壮大な10の実験』
帯には「宇宙の謎はどこまで解けたのか?」とある。あまりにも陳腐すぎて呆れるほどであり、逆に本体は面白いのかもしれないと買った。ザーッと斜め読みしてみると、ありがちなマイケルソンの光速度計測実験などは書かれていない。科学史の焼き直しではないことがすぐわかる。適当にページを開いても、低温ダークマター探査、バイカル湖ニュートリノ望遠鏡、超大型干渉電波望遠鏡群、気球搭載超伝導分光実験装置、南極ミューオンニュートリノ探知アレイなどがどんどん登場してくる。これは本物だ。


繪本 仮名手本忠臣蔵

繪本 仮名手本忠臣蔵

『絵本 仮名手本忠臣蔵
歌舞伎好きで、安野光雅好きだったら、買わざるをえない本である。じっさい両者のプロファイルはかなり重なっているのではないかと思う。もともと「週刊朝日」に連載されていた。大判見開きに31枚の絵と芝居解説。描かれている役者は、現実の歌舞伎俳優の誰とも似ていない。大道具や衣装の様式はきっちりと守りつつ、絵は舞台以上の広がりをもって描かれている。七段目一力茶屋の場だけは舞台絵になっていて、画家の視点の選択が素晴らしい。ともあれ、是非にでも和紙仕立てで再出版してほしいものだ。最近ではタッシェン歌川広重の名所江戸百選を和綴じで出版している。日本の出版社でもできるはずなのだ。

歌川広重 名所江戸百景

歌川広重 名所江戸百景



バチカン株式会社―金融市場を動かす神の汚れた手

バチカン株式会社―金融市場を動かす神の汚れた手

バチカン株式会社』
461ページと分厚く、活字がぎっしり詰まった本書は、そのうちに小説として再登場し、映画化もされるのではないかと想像したい。原書は2009年5月にイタリアで出版されてヒットし、すでに11か国で翻訳されている。著者は1990年代までバチカン銀行の重要人物だった故ダルドッツィ師から秘密文書を受け取った。その4000点にもおよぶ秘密文書にはバチカン銀行のマネーロンダリングについての詳細が記録されていたのだ。ローマ法王のお膝元は政治家とマフィアと財閥の結節点だったのだ。ともあれ、本書にはイタリア人やイタリア企業の固有名詞がどんどん登場するので、読み通すには時間がかかるだろう。それゆえ、小説化でもされないかと期待してしまう。まともな『ダ・ヴィンチコード』ができ上がると思う。

日本史のなかの茶道

日本史のなかの茶道

『日本史のなかの茶道』
完全に教科書である。第1章の平安時代1から第24章の大正時代2/昭和時代までの全24章はすべて時代名だ。図版や系譜なども適宜配置、人名などはゴチックでルビ付き、しかも横書きだから読み物としては書かれていないことは明らかだ。全国の茶道教師にとってはとてもありがたい本だと思う。資料として買った。