『不運の方程式』 週刊朝日 7月6日号「ビジネス成毛塾」
- 作者: ピーター・J.ベントリー,Peter J. Bentley,三枝小夜子
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2010/05
- メディア: 単行本
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本書は純粋な科学啓もう書であり、オカルト本でも怪しげな運命論を語った本ではない。身近な科学を日常生活に結び付けて説明しているだけなのだ。たとえば「電子レンジで加熱した水が爆発した」という小話を提示したあとで、各種の爆発について説明しはじめる。「過熱」の原理、水蒸気爆発とチェルノブイリ事故、「ヘンリーの法則」、減圧症と高山病などを手際よく説明するのだ。
この説明に要したのは、わずか7ページであり、このような章が38もあるのだ。お買い得感がある。もっと身近な、ガソリンと軽油を間違って給油するとどうなるか、ミツバチに刺されたらどうするべきか、瞬間接着剤で指を接着したら、というような項目もあり、読者を飽きさせることがない。
このような本こそが電子書籍向きなのかもしれないと思う。章はそれぞれ独立していて、どの章から読み始めてもよい。ウィキペディアなどにリンクを張ってもらえば、さらに使いやすくなるだろう。原書には多数の参考文献リストが付いているらしく、電子書籍の読者にとっては、ネット書店へのリンクもありがたいはずだ。
ところで、帯には「世界で話題の書、待望の日本上陸!」と華々しいのだが、アメリカのアマゾンでは原書の取り扱いがない。本国の英国アマゾンでもコメントは3件のみ。書籍の電子化は本体の電子化以前に流通で進んでいる。ネットで評判などは、すぐに調べがつくのである。それこそが出版業の不運の方程式なのだ。