Elsie Bianchi / The Sweetest Sound

ザ・スウィーテスト・サウンド

ザ・スウィーテスト・サウンド

JAZZ NEXT STANDARD (500 CLUB JAZZ CLASSICS) 監修:小川充

JAZZ NEXT STANDARD (500 CLUB JAZZ CLASSICS) 監修:小川充

Jazz Next Standard スピリチュアルジャズ

Jazz Next Standard スピリチュアルジャズ

1Q84 BOOK 3が話題となった村上春樹氏。氏の数々の作品からは、ジャズに対する造詣の深さが伺える。氏の作品を通して、ジャズに目覚めたハルキニストもいるのかもしれない。村上文学を本当に理解するためには、ジャズの造詣と理解が欠かせないなどと言えなくもないかしら。

私がジャズを聴き始めた頃のジャズ本は、一癖も二癖もある評論家によって書かれたものが多かった。機会があれば、黄ばんだその頃のジャズ本を中古書店や図書館で一度手にしてみて欲しい。私にとっては古臭い評論だが、これから読む人には逆に新鮮に思えるかもしれないから。

ジャズ評論の草分けとして勲四等瑞宝章を受賞した油井正一氏や野口久光氏。48歳でジャズに目覚め、その後多くのジャズ・エッセイを残したエッセイストの 植草甚一氏。高校の先生の傍らで、ジャズをわかりやすく解説してくれた大和明氏。幅広いジャンルの批評で活躍した論客、平岡正明氏。既に鬼籍いりしてし まったお歴々や、まだまだ現役の岩浪洋三氏らによって書かれたジャズ本で、私はジャズのABCを覚えた。

スイングジャーナルの編集長だった中山康樹氏、吉祥寺のジャズ喫茶オーナーの寺島靖国氏、四谷のジャズ喫茶オーナーの後藤雅洋氏、整形外科医でありなが ら、ブルーノートに特に詳しい小川隆夫氏、ヨーロッパジャズに詳しい杉田宏樹氏などは、次の世代の評論家として数多くのジャズ本を出している。寺島氏を除 けば、この世代の論評は私が持っているジャズ感に近いのかもしれない。

ここ10年で、クラブ世代と言えるジャズ批評家が出てきていたようだ。最早ジャズ本でお勉強することなどすっかりしなくなってしまった私だが、数年前に リットーミュージックから発刊された「JAZZ NEXT STANDARD」シリーズのジャズ・ディスク・ガイドは今でも時々眺めている。

「JAZZ NEXT STANDARD」と「スピリチュアル・ジャズ」の2冊に載っているレコードのカバー写真は、聴いたことはないものの、リアルタイムで見たことがあるレコードが多い。クラブ世代には定番ものなのかもしれないが、私にとっては「過去の新しいもの」だ。
「ハード・バップ&モード」に載っているレコードは、お決まりの名盤ものではなく、ヨーロッパ・ジャズを主体としたレア盤が多い。クラブ世代には、かえってこの辺りのJAZZから聴き始めた方がJAZZに入りやすいということか。

今回は、Elsie Bianchi / The Sweetest Soundを紹介しよう。レーベルはSABAで1965年の録音。ドイツ生まれの女流ピアニストであるElsieのムーディーなヴォーカルが堪能できる。 私がヨーロッパジャズを聴き始めるきっかけとなったレコードのひとつで、初めて聴いたのは、HOT CLUBの例会でゲットしたサンプルCDだ

(JHS-JAZZ 山田)