Howard McGhee / Dusty Blue

Dusty Blue

Dusty Blue

無地の茶紙に入れられていたSP時代を経て、10インチLP時代からレコードはカバーに入れられるようになった。40,50年代、BE-BOPからHARD-BOP時代のレコードカバーは、イラストレイターやデザイナーによって描かれたものが多い。眺めているだけで、そのレコードに収録されている音が漂ってきそうなカバーは、上質な芸術作品(カバー・アート)。JAZZのレコードは、カバーに入れられることによって、自らの芸術作品としてのより一層価値を高めていった。

50年代後半から、レコードカバーは殆どがフォトカバーに移行する。レーベルのイメージや、レコードに収録されている内容に見合ったデザインやレイアウトが取られるようになるのだ。先鋭的で、当時としては斬新なタイポグラフィと大胆なトリミングを駆使したリード・マイルスによる一連のBlue Noteのカバーなどは好例であろう。これはこれで、その時代の一瞬を閉じ込めた商業デザインではあるが、絵のカバーに比べると時代を超えたカバー・アートとしての価値は幾分低下してしまうに思える。

商業アートを軽んじているわけではないし、絵やイラストが芸術で、デザインは芸術ではないというふうに思っている訳では決してない。イラストのレコードカバーは、フレームに入れて部屋に飾って鑑賞したいが、フォトデザインのレコードカバーは、レコードをかける時だけ見られればそれで十分という単純な個人的主観に過ぎない話と理解していただいて構わない。私が愛でるJAZZのレコードカバーは「イラストのカバー」なのだ。それも10インチサイズ。一般的な12インチサイズでは、10インチと同じイラストのカバーであっても10インチ同様には魅力を感じない。たかが2インチと侮るなかれ。その2インチの差こそが、私の「こだわり」なのである。

Mercury - Clef - Norgran - 初期Verve レーベルで、多くの優れたイラストを描いてきた David Stone Martin。彼のイラストの中で、私が最も好きなものは Johnny Hodges / Collates だ。


ウサギとJAZZ。なんて、かっこいいんだろう。もう言うことなし。私は、彼が描いた10インチLPカバーのコンプリートコレクションを画策している。半分無理だと思ってるけど。

今回は Howard McGhee / Dusty Blue を紹介しよう。レーベルは Bethlehemで、1960年ニューヨークでの録音。ブルーのカーテンを背に、一見マイルス・デイビスと見間違いそうなうつむいた姿がとてもダンディだ。JAZZといえば、BLUE。タイトルに「BLUE」と付くレコードは、いい内容のものが多い。ファッツ・ナバロやディジー・ガレスピーと共に、BE-BOP の立役者であったハワード・マギーだが、ヤク中に陥ってしまって、50年代は継続的な活動ができなかった。本作は、都会的で大人のプレイが楽しめる通好みのレコード。オリジナル盤はかなりのレアで、コンディションが悪くても10万近くするほどの人気盤。今ならCDで¥1,000で買えてしまう。

(JHS-JAZZ 山田)