『星めぐり歳時記』
- 作者: 海部宣男
- 出版社/メーカー: じゃこめてい出版
- 発売日: 2009/07
- メディア: 単行本
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本書もまた不思議な作りになっている。127ページに5つの章が設定されている。第1章は「宇宙に紡ぐ―光のことば12カ月」。天体写真とその解説、そしてその天体にちなんだ詩歌とその解説が12セットだ。
たとえば2月は「おうし座」の「かに星雲」。「かに星雲」は超新星の名残で、中心では中性子星が明滅を繰り返すと解説される。そして選ばれた詩歌は『古今和歌六帖』から「君にのみ逢はまく星の夕されば空に満ちぬる我心かな」だ。『古今和歌六帖』は和歌の大辞典であり、歳時記のはしりであるとも解説がつづく。
第2章は「七耀の歳時記」で、この章には写真はなく、日月火水木金土の天体エッセイとやはり詩歌だ。ここでは『万葉集』から宮沢賢治までの詩歌が登場する。
第3章は「星の誕生・宇宙のはて」と題して、こんどは写真を使った宇宙の解説なのだが、取り上げているのはたった5点、星の誕生、星団、星の終わり、銀河、宇宙のはて、だけである。「
第4章は「春夏秋冬 星空散歩」の章。春夏秋冬の星座とその解説と詩歌。なぜか最後のページには日本から見える明るい星17ランキングのリストが付いている。
最後は「星と暦の質問箱&星用語MEMO」で、章としては扱われてはいないが「おまけ」でもない。見返しにはそれぞれ月の満ち欠け表と全天88星座表が印刷されている丁寧さだ。
それにしても不思議きわまりない本である。宇宙についても詩歌についても、個別にみるとページ数が少ないため、内容が薄い印象になる。しかし、1冊の本として見るとじつに魅力的なのだ。著者の2つの世界への思い入れがひしひしと伝わってくるからだ。
いつも手元に置いておいて、星が見える夜に、夜空を見る気になったら、この本のページを開いてみよう。もし、次の10年で1年に1回でもそんなことがあれば、1回につき150円というお買い得本である。