Vic Dickenson / Showcase

The Essential Vic Dickenson

The Essential Vic Dickenson

「JAZZ」カテゴリーの書き手を担当するようになってから1年。先ずは、私の拙い文章にお付き合いいただいたお礼を申し上げたい。

激動の2009年が終わろうとしている。政権交代して4ヶ月。この国の方向性が未だ見えてこない。未曾有の大不況の最中に、自公政権時代のつけの帳尻合わ せをしなければならない事情は汲もう。とはいえ、変革のパワーとスピードが感じられなくなったらお終いである。

いづれにせよ、あと数日で2010年代が始まる。2000年代とはどういう時代だったのか。1990年代の「失われた10年」を引きず り続けた年代に過ぎなかったのか。無気力、諦めの中から革新は生まれない。

JAZZは、時代背景に敏感な音楽だった。時代のパワーそのもので、革新的な音楽だった。大人のための音楽であり、娯楽であった。50 年代中頃に誕生したロックが60年代にJAZZを駆逐し、革新の担い手が大人から若者に切り替わるまでは。

当時の若者に迎合した一過性の流行音楽は、後世に語り継がれることはない。はやりの音楽が残したものは、「昔の」若者だった人が感じる「懐かしさ」だけ だ。「今の」若者は、それを「古臭い」と感じるか、「新しい」と感じるか。知っていれば「古臭い」し、知らなければ「新しい」音楽。新しいものでも、知っ てしまえば、そのうちに懐かしい音楽になってしまう。流行音楽の宿命であろう。

青春時代をロックとそのルーツであるR&Bで過ごした私にしてみれば、JAZZに「懐かしさ」を感じることはない。流石に「新しさ」は感じない が、相変わらず飽きもしないで聴いている。時代を超えて生き残ったJAZZは、いつになっても色褪せることもなく、私を楽しませてくれる。このご時勢のせ いか、よる年並みのせいか、パワーの塊のようなハードバップは聴き疲れしてしまうのであまり聴いていない。最近は、中間派ジャズを聴く ことが多い。ちょっと前まで退屈で聴かなかったのだが。

クラブ派の若者にも、最近は中間派ジャズのファンが多いらしい。それほど現在は酷い時代ということなのかもしれないが、若者が音楽に癒しを求めるような 2010年代は勘弁して欲しい。若者は、常に変革の担い手であって欲しい。いつまで経っても旧世代が現役であり続け、次世代が育たないようないびつな社会 に未来はない。日本という社会全体が低レベル化してきているように思っている。

今回は、Vic Dickenson / Showcase を紹介しよう。レーベルは Vanguardで、1953、1954年の録音。中間派ジャズを代表する一枚である。CDではベスト盤の形で出ているが、できればレコードを入手して聴 いてもらいたい。中間派ジャズとは日本独自の言い回しで、スィングからビーバップの中間のジャズという意味合い。基本は、ヘッド・アレンジのみのジャム セッションである。これは、これで、ひとつのJAZZの真髄。

(JHS-JAZZ 山田)