消費税引上げ+国民総申告+控除廃止は可能か

一般会計が92兆円まで引き上げられた。近い将来には消費税の引き上げが必至になるであろう。その場合の思考実験をしてみる。

(1)消費税が5%から10%に引き上げられたとする。

(2)まずは、たとえば年収330万円の人の所得税率を10%から0%に引き下げるべきだ。消費税は逆累進性があるので。低所得者の生活を考慮すると、これ以外に方法はないと思う。

(3)次にすべての控除をやめる。給与所得控除65万円と基礎控除38万円の停止だ。現在はその2つの控除の合計額である103万円がパート給与の境目だ。103万円以上になると税金を取られるからだ。
しかし、控除をやめ最低税率を0%にすると、現在の所得税率の境目である195万円までパート給与は跳ね上がることになる。所得税を払っているすべてに人にとってはこれだけでは増税になる。

(4)しかしさいごに、すべての就業者による電子申告による確定申告の義務化をしたうえで、経費を認めることにするのだ。営業マンのスーツ、大工さんの個人持ちの道具、公務員の個人交際費などあらゆる経費を含むことにする。この経費率を現在の控除率と同じにすると、全体としては減増税はない。しかし、業種・職種によっては個人の損得が発生するであろうから微調整は必要だ。

じつはこの4段目が重要なのだ。その理由は・・

1.源泉徴収から確定申告にすることで、税金を支払っているという実感を持つことになる。そのため、税金の使われ方に対して国民全体の監視が強くなる。

2.サラリーマンにも経費が認められるとなると、衣服や道具などに対する需要が増えるであろう。GDPの多くの部分を個人消費が占めているのだがら、使ったほうが得という制度が望ましい。単に補助金を個人に配るだけでは、デフレ下ではその多くが貯蓄にまわるのだ。

3.また、電子申告をするためにはITエンジニアやスクールなどが必要になり、ここにも需要が生まれる。もちろん、電子申告の経費は控除できるようにする。環境や介護などの新産業ももちろん重要だが、労働力の転換は短期間では難しい。それに比べてIT分野の需要喚起は労働力の調達が比較的に容易なため即効性があるのだ。電子申告は領収書の電子化なども促すことになるため、企業のIT投資も増えるだろう。

4.個人交際費を経費として認めるのだから、なにかと送別会などの義務的な付き合いの多い公務員も、怪しい資金を作る必要はなくなる。

5.また、個人消費に関係する政策の自由度が増すであろう。政府が国内旅行を増やしたければ、今年は経費として国内視察費を5万円まで経費として認めるとすればよいだけだ。

6.問題があるとすれば、いわゆる製造業の労働者などの制服組には、スーツなどの経費が発生しないにも関わらず、基礎控除や給与所得控除がなくなるため、増税になることだ。これについては、(2)のように所得階層別の税率を、0%の可能性も含めて大幅に見直さなければならないであろう。

ともかく、このような大規模な税制の変更などは、大規模で長期的な思考実験をし続ける必要があると思う。選挙を目的に、思いつきでやられてはたまらない。


参考資料

国税庁によれば所得税の確定申告者数は約700万人、源泉還付申告者は1千万人、その他を含めると2千万人が所得税の計算をして申告していることになる。

http://www.nta.go.jp/kohyo/katsudou/report/2003/japanese/tab/tab12.htm

いっぽう、統計局のデータによると労働力人口は6600万人あまりだから、3人に1人は申告しているのだ。国民総申告制に移行しても電子化による合理化も進むので不可能でなない。

http://www.stat.go.jp/data/nenkan/16.htmの16-2による

ところで年収300万以下の人の比率は全給与階級中26.9%だ。

http://www.nta.go.jp/kohyo/tokei/kokuzeicho/minkan2000/menu/05.htm#a-03