Sonny Criss / Go Man!

ゴー・マン!

ゴー・マン!

Go Man (Tgv) [12 inch Analog]

Go Man (Tgv) [12 inch Analog]

その昔。JAZZは、元来常に時代のエネルギーを担い続けた最先端かつ革新的な音楽であり、時代とともにそのスタイルを進化させる音楽だった。60年代以降に台頭してきたモードジャズやフリージャズによって、表現の革新性は、その後の混迷化を招き、挙句の果ての行き詰まりという当然の帰結を迎えてしまう。この時点で、革新的アートとしてのJAZZは終焉してしまったと言えるのかもしれない。

かっての勢いを失い、進むべき方向性を失ったアートは、その後の時代の変化に合わせて多様化し、己のエネルギーを拡散させていくという進化(退化)を辿った。その結果は、様々な音楽シーンに影響を与えるとともに、過去に消えてしまったJAZZスタイルの復活につながってくる。

そして今。JAZZは「なんでもあり」の状態になってしまっている。ディキシーも、スイングも、バップも、モードも、フリーも、フュージョンも、それぞれが同じ時代に生きるJAZZスタイルのひとつとなった。この「なんでもあり」はJAZZに限った話ではなく、ロックなどにも当てはまることは言うまでもない。

トランペッターのウィントン・マルサリスが、20歳で「Wynton Marsalis」というデビューアルバムを発表したのは、マイルス・デイビスが興したフュージョンの全盛期。なんで今時の若者が懐古主義的なフォービート・ジャズなんてやるんだと賛否両論の物議を醸したのはもう30年も前のお話。最早どんなスタイルのJAZZであろうと、「古臭い」とか「時代遅れ」などとは誰も言わないし、思わなくなっている。私自身、演歌を除いて「なんでも聴く」、「なんでもあり」派なので、いろいろなスタイルのJAZZが楽しめる今は、とても心地のよい時代だと思っている。

JAZZは、アートであり文化なのだ。好き嫌いでJAZZを判別し、娯楽として楽しむのも結構だが、JAZZをアートと捉えれば、アートを享受する側のレベル次第で新たな価値を見出せる筈。先ずは、ジャズ史でも軽く「お勉強」してみることをお勧めしたい。

今回は、Sonny Criss / Go Man! を紹介しよう。レーベルはImperialで、1956年の録音。カバー写真の秀逸さは、以前に紹介したサージ・チャロフのブルー・サージのセンスの良さに並ぶ。クリスのアルトをソニー・クラーク、ルロイ・ヴィネガー、ローレンス・マラブルのリズムセクションが支える大人気盤。下品なチャルメラ節と揶揄されることもあるが、奔放かつ高らかに吹き続ける「クリス節」と呼ばれるプレイは、俗っぽく、色っぽい。Amazonでは、レコードでも買える。

(JHS-JAZZ 山田)