Lennie Niehaus / Complete Fifties recordings


最近、すっかり実店舗で本やCDを探し出すという行為をしなくなってしまっている。ネットでCDや本を買うようになってからは、聴いてみたい、読んでみたいという意欲が最後まで持続しないのだ。入手後、本ならさわりのページくらいは捲ってみたりするのだが、CDはシールドを剥くのが億劫で、聴かないまま積み上がってしまう。DVDのレンタルも、もっぱらネットである。1ヶ月4枚まで980円、返却期限がないので、延滞金を気にせず見なくても借りっ放しでいられるからだ。

新型インフルエンザで寝込んでしまった妻の看病のため、仕事を休むことにした。妻には悪いが、この際これまで聴かずに放っていた新譜CDでも聴き溜めしてやれと目論んだ。果たして、私の部屋に妻を隔離することになってしまったので、高熱でうなされている病人の手前、JAZZの CDをかける訳にもいかなくなってしまった。私といえば、なんとなく本を読む気にもなれず、リビングで映画でも見ながら看病の合間の時間を過ごすことにした。ヴォリュームを上げなければ、彼女の睡眠の妨げにもなるまい。

結局8枚程のDVDを見てしまった。その中の一枚クリント・イーストウッドの「Changeling」がある。主演はアンジェリーナ・ジョリー。私は、トゥームレイダーでの彼女しか知らなかったので、この映画にはちょっとびっくり。彼女はこの演技で2008年のアカデミー主演女優賞にノミネートされた。

クリント・イーストウッドが監督した映画は、アメリカの陰を描いたものが多い。画はモノクローム的で、とてもJAZZYだ。彼の作品には、JAZZが使われることが多い、「Mystic River」、「Million Dollar Baby」、「Flags of Our Fathers」、「Changeling」では音楽まで担当している。JAZZに造詣が深い彼は、1988年の作品「バード」でチャーリー・パーカーの生涯を再現している。

JAZZプレイヤーを主題にした映画から、JAZZを知ることも一興だろう。「バード」の他にも、テナーサックス・プレイヤーのデクスター・ゴードンが主演した「ラウンド・ミッドナイト」、トランペット・プレイヤーのチェット・ベイカーのドキュメンタリー「レッツ・ゲット・ロスト」、スパイク・リー監督、デンゼル・ワシントン主演の「モ・ベター・ブルース」あたりがお奨めか。暗い映画ばかりだけど。

今回は、Lennie Niehaus / Complete Fifties recordings というCDを紹介しよう。これは、彼が Contemporary レーベルに残したレコード、「Vol.1: The Quintets」(1954年)と、「Vol.2: Zounds!」(1956年)、「Vol.3: The Octet #2」から収録したもの。3枚とも、洒脱でアンサンブル・アレンジが効いた1950年代のウエストコースト・ジャズを楽しめる好盤である。彼のアルト・サックスは、きれいでサラッとした感じで、それなりにCOOLではあるのだが、チャーリー・パーカーのプレイとは真逆。そんなニーハウスが、クリント・イーストウッドの映画の殆どの音楽を手がけている。イーストウッドとは、朝鮮戦争の頃の陸軍時代、盟友だったらしい。

(JHS-JAZZ 山田)