Miles Davis / Kind of Blue

1950年代後半から1960年代後半位まで、レコードはMONOURAL盤とSTEREO盤の両方がリリースされることが多かった。当時は、両方式が同時にリリースされたケースと、先ずMONOURAL盤がリリースされ、その後STEREO盤がリリースされたケースの2通りがあった。後者には、擬似ステレオ盤という代物もあったが、これは総じて酷い音なので聴かないで欲しい。Electronically Enhanced for Stereoというような記載がカバーにあればまだしも、記載のないSTEREO盤などは詐欺のようなものである。

一見同じように溝が切られてあるレコードなのだから、MONOURAL盤とSTEREO盤の違いは聴いてみなければわからない。年代に寄るのだが、 MONOURAL盤の音源がマイクを1本しか使わずに録音されたものだと単純に理解しないで欲しい。両方式の違いは、録音方式の違いというより、レコードを聴く側の再生方式の違いと考えた方がわかりやすいだろう。

STEREO再生機器が一般家庭に普及していくと、MONOURAL盤は姿を消していくことになる。MONOURAL盤は左右2chのステレオ機器で聴くことはできるが、STEREO盤をモノ機器で聴くと片chの音しか出てこないのだから。

JAZZレコードファンは、MONOURAL盤を好むことが多い。従って、同時に両方式がリリースされたオリジナル盤でも、一般的にMONOURAL盤の相場の方が高い。MONOURAL盤の方がSTEREO盤より音がいいと断言するJAZZレコードファンは多いが、これは聴き手の感性の問題だと思う。 MONOURAL盤は、音圧が高く躍動感がある音だが、STEREO盤は臨場感がある音なので、当然STEREO盤の方が音がいいという人もいる。ADがいいか、CDがいいかという次元の問題のようなもので、どっちの方式がいいかは聴く側の好みと、レコード次第。

ステレオにMONO/STEREOの切替えスイッチがあるのであれば、MONOURAL盤はCDであろうともMONOに切り替えて聴いて欲しいし、レコードなら、MONOに切り替えることに加えてモノカートリッジを使って聴いて欲しい。新しい音の世界が拡がることだろう。私がMONOURAL盤を聴く場合は、スピーカー1本しか使わない。その方が実体感があっていいからである。私にとっては。

今回は、Miles Davis / Kind of Blue を紹介しよう。レーベルはColumbia、1959年ニューヨークでの録音。JAZZファンでなくても、マイルスの名前位は知っているだろう。モード・ジャズの頂点とも言えるこのレコードは、ジャズ史上屈指の名盤のひとつ。JAZZにあまり詳しくない人にとっては、このレコードこそがJAZZなのかもしれない。あえてこんな大名盤を紹介するのは、STEREOオリジナル盤の方がMONOURALオリジナル盤より人気がある稀有な例のひとつだから。

(JHS-JAZZ 山田)