東洋経済 10月31日号掲載 「ゴルフざんまい」 レッスンでゴルフ嫌いになる不幸

週刊 東洋経済 2009年 10/31号 [雑誌]

週刊 東洋経済 2009年 10/31号 [雑誌]

数ヶ月前から人生はじめてのゴルフレッスンを受け始めた。自分でも驚くほど飛距離が伸び、スコアも良くなった。スイングもキレイになり、なによりもゴルフがさらに好きになった。

じつは20年ほど前、某超名門コースに連れていってもらったことがある。よほど私のプレーがひどかったのであろう、いますぐレッスンプロに習うべきだとラウンド後に練習場に連行された。ディズニーランドに行ったら、いきなり強制隔離入院させられたようなものだ。

コース所属の70才台のレッスンプロも呆れたか、ビジターだからどうでもよかったのか、とりあえずは練習生でよかろうと、ボール小屋を掃除している若者を指名した。これがいけなかった。

アドレスを直すときには自分のクラブを指示棒代わりに使い、膝や尻をグリップの先で「膝は止めて」などといいながら小突くのだ。しまいには「ゴルフに向いていないかも」とつぶやきだす始末だ。「お前こそビジネスには向いてないだろう」と心のなかで突っ込みをいれたことは言うまでもない。

超名門であるからクラブハウスではコースの蘊蓄をたっぷり聞かされ、当然マナーについては風呂の入り方にいたるまで、ラウンド前から念を押された。しかし、クラブハウスの裏に回ると、ゴルフがうまいだけで、人としてのマナーも知らない若造を先生と呼ぶ不思議な光景があったのだ。

それからのゴルフは自己流である。本や雑誌を定期的に買い込み、DVDも見た。その結果、やっと100を切れるようになったのは5年ほど前である。そのころに家内が友人のすすめでゴルフレッスンを始めた。駅前インドアレッスン場に通い始めたのだ。

しばらくして、はじめての家内のラウンドレッスンに付き合うことになった。60才台と思われるレッスンプロは朝からじつに明朗で、今日は俺に全てを任せてくれと自信満々であった。これがいけなかった。

スタートの4ホールまでは私がプロに勝っていた。ドライバーの飛距離も大差なく200ヤードそこそこだ。遥か昔にプロテストに合格しただけで、いまではアベレージゴルファーに毛が生えた程度の人からレッスンを受ける筋合いはない。

しかも、その教え方は「そこをもうすこしぐっと堪えて」「スーッと引くように」「バーンと」などと長嶋用語満載なのだ。アドレスやポスチャーの矯正はなく考え方はスイング中心だ。

やがてゴルフ場に閑古鳥がなくことになったのは当然の帰結だ。レッスンプロを先頭にしてゴルフ業界全体が時代に取り残されてしまったのだ。しかし、それをチャンスとして本格的で近代的なゴルフレッスンが始まっている。次回は我が母校「ダンロップゴルフスクエアおおむらさき」の試みについて書いてみよう。