Lorraine Geller at the Piano

ロレイン・ゲラー・アット・ザ・ピアノ

ロレイン・ゲラー・アット・ザ・ピアノ

  • アーティスト: ロレイン・ゲラー,リロイ・ヴィネガー,エルドリッジ・ブルーズ・フリーマン
  • 出版社/メーカー: MCAビクター
  • 発売日: 1997/02/21
  • メディア: CD
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レコードを聴くためには、レコードプレイヤーだけでなく、フォノイコライザーが必要であることは前に述べた。ここでは、フォノイコライザーについて、もう少し詳しく説明しておきたい。レコード再生の本質的な問題に関わってくることだからだ。

マスターテープからミックスダウンされた音楽信号を原盤(ラッカー盤)にカッティングする際には、低音域レベルを下げ、高域レベルを上げるという周波数特性で録音(ラッカー盤に音溝を刻む)される。フォノイコライザーの役割は、レコードの再生時に周波数特性がフラット(ミックスダウン時の音)になるように、録音時とは真逆の周波数特性で補正し増幅することである。

この録音特性を周波数ごとにプロットしたものをカーブ(曲線)という。当初、このカーブはレコードレーベルごとに異なっていた。代表的なものに、Columbia/LPカーブ、NABカーブ、AESカーブ、Decca/ffrrカーブ、Old RCAカーブなどがある。レーベルによっては、SPとLPでも違うし、LP同士でも違う様々なカーブが乱立していた。特にJAZZの場合はマイナーレーベルが多かったので、良くも悪くもある意味「いい加減」であった。

1950年代中頃、「RIAA」(Recording Industry Association of America、文字通りのレコード業界団体)が、RCAのNew Orthophonicカーブを標準規格として制定。それ以降、「RIAAカーブ」と呼ばれるこの規格に準拠したレコードが作られるようになるが、 RIAAカーブで録音特性が統一されるようになったのは1960年代になってからのこと。

従って、厳密に言うと、RIAAカーブの補正を目的としている一般的なフォノイコライザーでは、他のカーブによって録音されているレコードの本当の音が聴くことができないということになる。本当の音を聴くためには、そのレコードの特性カーブに合った補正をしてくれるフォノイコライザーを使うか、自分の耳を頼りにトーンコントロールで調整するしかない。面倒くさいし、オタク的な話だと思うが、レコードに記録されている本当の音を聴くためには、結構な労力が必要となるのである。

かくいう私と言えば、以前は補正特性を可変できるフォノイコライザーを使っていたこともあったが、レコード1枚かける度に調整する手間が面倒くさくなってしまって、すっかりカーブの問題には拘らなくなってしまった。今使っているフォノイコライザーRIAAカーブ専用のものだし、MONO盤かSTEREO 盤かでカートリッジを取り替える位の手間しかかけていない。単純に、気分よく自分にとっていい音を楽しむようにしている。

今回は、Lorraine Geller at the Piano を紹介しよう。レーベルはDotで、1954年の録音。彼女は、夫であるHerb Geller と共にEmArcyレーベルで数枚のレコードを残しているものの、1958年に30歳の若さで逝去してしまったため、これは唯一のリーダーアルバムということになる。歌心を持ちながらガンガンに攻める彼女のピアノを、Leroy Vinnegar のベースと、Eldridge Freeman のドラムがサポートするピアノトリオの大名盤。こういうピアノトリオのレコードは他にない。オリジナル盤は、Dotレーベルの中でも1,2を争う高額で取引されている。