富樫雅彦 / The Ballad My Favorite

ザ・バラード

ザ・バラード

9月9日にビートルズのリマスターCDが世界同日発売されたことが随分話題になっているようだ。CNNでもやってたから、商売上手なアップルとEMIの戦略にまんまと踊らされているのは日本だけではないということだろう。解散から40年、今更ながらビートルズの偉大さを思い知らされる。

都内では、複数のCDストアが午前0時からの特別販売を実施したという。深夜0時の解禁なんて、一昔前のボジョレーヌーボーとか、WINDOWS 2000の発売の時みたいな話だが、今回はあくまで再発CDのお話である。朝日新聞によると銀座の山野楽器では約30人の行列ができ、既に日本だけで100万枚が予約されているとある。半世紀最新のデジタル処理で音質を向上させ、従来のアルバムに比べ最も原音に近くなっているというのだ。

ご丁寧に、NHKのニュースでは、これまでのCDとこのリマスター盤の音を聞き比べさせていた位だから、誰にもその違いがわかるということなんだろう。TVからの音ということもあるのだろうけれど、お恥ずかしいことにアナログな私の耳では音の差がわからなかった。

CDが世に出た80年代のデジタル技術は、最新のデジタル技術より劣っていることは間違いないことだろう。でも、最新のデジタル技術による音だから、80年代の音よりいいということではなく、単に既存のビートルズのCDがひどいリマスタリングだったというだけのことじゃないのだろうか?

最も原音に近くなっているというが、ここでいう原音とはどの音のことを指しているのだろう?まさか、マスターテープの音という訳ではあるまい。マスターテープの音なんてエンジニアしか聴けないのだから、アナログのオリジナル盤の音のことを言っているのだと思っている。あるいは、単純に、過去に各国でリリースされたやレコードの音のことなのかもしれないが。

イギリスEMIレーベルのオリジナル盤>各国盤のレコード>今回のリマスターCD>これまでのCDという順で音がいいとして。音のいいビートルズサウンドを聴きたいのであれば、CDじゃなくて、レコードで(できればオリジナル盤で)聴けばいいだけのことではないかしら。

レコードプレイヤー持ってないからCDで聴くしかないんだよと言われるかもしれないが、14タイトルを買い直す程好きなら、レコードプレイヤーを買って、いっその事オリジナル盤を入手して聴いてほしいものである。アナログ・マスターが究極のオリジナルなのだとすれば、可能な限りオリジナルに近いポジションのレコード(コピー)を聴く。この音を知らずして、今回のリマスターCDの音をどうのこうの言えないでしょ。

今回は、富樫雅彦 / The Ballad My Favorite を紹介しよう。1981年7月、東京での録音。レーベルは日本のKing Records。ピアノは佐藤允彦、ベースは高水健司。これは、彼のリーダーアルバムの中で唯一のスタンダード・ナンバー集なのだ。秋の夜長、緊張感あふれる3人のプレイを是非堪能して欲しい。COOLだけでは済まされない、深い音楽がそこにある。ここ数年の私のFAVORITE ALBUM なのだが、実は私はこのレコードをCDでしか聴いたことがない。レコードで聴きたい
のだが、いまだ入手できずにいる。彼は60年代のフリージャズの第一人者で、1970年に不慮の事故で下半身不随となるが、ハイハットとバスドラなしの独自のドラムプレイを築き上げた不世出の天才打楽器奏者であった。

(JHS-JAZZ 山田)