Booker Little

"When you hear music, after it's over, it's gone in the air. You can never capture it again. "

1964年、36歳の若さでベルリンで客死した Eric Dolphy。彼の遺作となってしまったアルバム「Last Date」のB面最後に、肉声でこの一言が収録されている。私がJAZZを好きな理由、JAZZから離れられない理由、飽きもせず聴き続けている理由は、この一言に尽きるように思う。

Eric Dolphy にたどり着くまでは、長い時間をかけてもらった方がいい。Charles Mingus や、後期の John Coltrane もそう。JAZZを聴き始めたばかりの人には、小難しい、訳のわからないものにしか聴こえないだろう。JAZZってこういう音楽なんだと思い込まないでほしいから、自分の好きなタイプのJAZZをいろいろ聴いてもらって十分JAZZ全般に慣れてもらってから聴くことをお勧めしたい。JAZZの楽しさ、本質がわかってもらえないまま、JAZZを遠ざけられてしまって欲しくはない。クラシック音楽でいえば、シェーンベルクとかバルトークあたりを楽しめるようになるには、それなりの研鑽が必要なのと同じ。

それでも、いつかは彼らのJAZZ、いや彼らの音楽を聴いてもらいたい。食わず嫌いで済ませてしまうのは本当にもったいないのである。決して、心地よく、楽しいものではないかもしれない。ながら聴きするような音楽ではないし、彼らの世界と対峙させられるような緊張感を強いられることにあるだろう。しかし、人間の本質を垣間見るその緊張感が心地よいと思うようになれば、それは新たな娯楽の桃源郷に踏み込んだようなものである。もうJAZZから離れられないようになるだろう。私は、まだまだこの桃源郷を味わいたい。

今回は、Booker Little を紹介しよう。レーベルは、Time。1960年、ニューヨークでの録音。彼は翌年23歳の若さで他界してしまったトランペッター。Eric Dolphy との協演も多い。Clifford Brown 亡き後のトランペット奏法の新境地を開いた一人だが、活動期間が3年間しかないため、音源は少なく、リーダーアルバムは4枚しかない。このレコードは、唯一のQuartet で、リズムセクションは、ピアノがTommy FlanaganWynton Kelly、ベースが Scott LaFaro、ドラムスが Roy Haynes という豪華メンバー。歯切れのよい、磨きぬかれたトーンが楽しめる大名盤。

(JHS-JAZZ 山田)