「ベーシックインカム制度は成立するか」 ザックリと計算してみました

ベーシック・インカムは国家による最低生活保障を超低コストで行うことです。もし国民1人あたり年間100万円を配るとしますと、128兆円の財源が必要となります。

http://www.mof.go.jp/jouhou/syukei/sainyu/h21/212104/2104a.htm

このリンク先の財務省国庫歳入歳出状況(平成21年4月末)から主要な数字を抜粋しますと、所得税は16兆円、法人税は11兆円、消費税は10兆円であり、3税の合計は37兆円。(ちなみに公債金は33兆円)

また、同報告書2ページ目にある特別会計の中の年金部分(基礎+国民+厚生)は合計で64兆円です。

ベーシックインカム制度移行により年金制度は廃止になりますが、同額を所得税や法人負担金という形で徴収することにします。(個人も法人もここでは負担率は変化しません)その結果として財源の不足分はベーシックインカム給付額128兆円−現在の年金収入64兆円=64兆円となります。

そこで、仮に所得税率、法人税率、消費税率を一律2.7倍にしますと、不足分の64兆円の財源が捻出できることになります。

http://www.mof.go.jp/jouhou/syukei/siryou/sy1801n.pdf

このリンク先のデータによれば、現在の国民負担率は39%であり、国税部分は13%です。(ちなみに社会保障部分は16%)

3税の税率を一律に引き上げた結果として、国税部分は2.7倍の35%になりますので、国民負担率は61%:(39−13)+(13X2.7)になりますが、ベーシックインカム負の所得税となるので、そもそも国民負担率の計算の意味はなくなります。

そこで個別財源をみてみましょう。法人税の実行税率は現在30%程度なので2.7倍すると81%に引きあがります。このレート下では、上場会社は株主代表訴訟を恐れて、全組織を海外に移転する可能性がでてきます。

所得税最高税率は1800万円以上の40%ですから、この層の税率は108%になります。念のために、1800万円の給与所得者の納税義務額は1944万円という意味です。もはや、お金を稼ぐ意味は全くなくなります。

所得税の最低税率は195万以下の現在5%ですから、これは13.5%となります。これに一律課税の住民税10%を加えると23.5%となりますので、収入が130万以下の人の手取りはベーシックインカムの100万円を下回ります。

いまでもパートは年収130万円を超えると各種控除がなくなり所得税、住民税、社会保険料を支払うため150万円までは手取りがダウンしつづけます。結果的にベーシックインカム導入で年収150万円以下のパート勤務をする理由はまったくなくなります。

消費税率は現在の2.7倍の13.5%になり、これだけは先進国よりも低いレートです。フランスは19.6%(食品5%)、イギリスは17.5%(食品0%)などです。ただし、日本では食品にも同税率が適用されますから、エンゲル係数が高い層の税負担はおそらく世界でも最高レベルになると思います。

この計算には、無用になる社会保障系の公務員関連の費用の低減などが含まれていません。ベーシックインカムの良いところは、富の再配分に関わる社会システムを廃止できることにあります。しかし、ざっくりと計算しただけではベーシックインカム制度は前途多難というところでしょうか。