『自然界の秘められたデザイン』

自然界の秘められたデザイン 雪の結晶はなぜ六角形なのか?

自然界の秘められたデザイン 雪の結晶はなぜ六角形なのか?

あえて表現すると自然界における対称性についての本である。著者は雪の結晶がなぜ6角形なのかという問いを読者に与え、それに対する解答が得られるように、論を進めていく。いや、論を進めるというよりは、森羅万象について数学的な見方があるということをぶちまけるという感じなのだ。

第1章(雪の結晶にひそむ謎)では天文学者ケプラーが、雪の結晶が6角形であることを数学的に表現しようとしたと紹介する。ケプラーが天体だけでなく、雪の結晶のような自然のパターンを解明することに興味があったことをまずは読者に伝えたいようだ。つまり、本書にパターンを探して解明するという位置づけが与えられたことになる。

第2章(自然界のパターン)は20ページしかないのだが、そのなかで使われている写真だけでもシマウマの縞、波の鳥瞰、縞を持つ魚、3種の砂丘の縞、ハチの巣、鉱物の結晶、土星の輪と大量だ。紹介される「専門用語」もバルハン稜線、対数らせん、フィボナッチ数など多彩だ。

このようにして3章だての第1部は終わり、第2部はいよいよ「数学でできた世界」だ。1次元、鏡映対称性、回転対称性、タイル張りのパズル、斑点と縞、3次元、スケールとらせん、時間、という8章で構成される。最後の第3部は「単純さと複雑さ」を5章に分けて取り扱うことになる。

数式が全く出てこないのでかえって対象となる読者層の想定が難しい。科学薀蓄好きはもちろんなのだが、写真で出題されるカルトクイズの勉強をする人、イギリスにおける博物学の伝統を研究する人など、存在しそうもない人向きの本でもある。無茶苦茶に内容を詰め込んであるので、読むのにはある程度の基礎知識が必要だ。

とはいえ、ここまで書評を読んで興味を持った人向きに、第8章で取り扱う内容を紹介してみよう。だらだらと自然の縞模様と斑点について語ったあと、クエット・テイラー方式と呼ばれる二重円筒を使った模様発生装置について説明がある。その装置が作り出すパターンと対流の類似性について説明したあとで、気象における対流セルが紹介される。

さらに化学物質の反応において作られるパターンをチューリングが見つけたこと、その事例として「ベロウソフ・ジャボチンスキー反応」が発見されたなどと続く。話はいきなり飛んでつぎはアメーバが集団でつくるパターンについての話になり、それにはサイクリックAMPというアメーバが出す化学物質の分泌速度が関係するという。

そしてついにこのアメーバの集団である移動体の動きを3次元でモデル化したときに「スクロール波」と呼ばれる現象が関わってくることが判明し、これがベロウソフ・ジャボチンスキー反応と関係していることが明かされる。

本書は重い。内容も重いのだが、厚いコート紙を使っているので物理的に重いのだ。横になりながら本を持ち上げて読むと腕がだるくなる。